ゴナドトロピンによる卵巣刺激後の高度多胎妊娠のリスクを低下させる
Reducing the Risk of High-Order Multiple Pregnancy after Ovarian Stimulation with Gonadotropins
N. GLEICHER, D.M. OLESKE, I. TUR-KASPA, A. VIDALI, AND V. KARANDE
不妊症治療後の多胎妊娠の発生は,ゴナドトロピンによる排卵誘発治療を受けている女性でとくに高くなっている.高度多胎妊娠(3 児以上の妊娠)の発生数を減少させられるかどうかはわかっていない.
1,494 例の不妊症の女性に実施された 3,347 サイクルの連続した治療データを解析した.なお,妊娠にいたったのは,このうちの 441 治療サイクルであった.収集したデータは,エストラジオールの最高血清中濃度,直径 16 mm 以上の卵胞数,ヒト絨毛性ゴナドトロピンによる排卵誘発日の総卵胞数などであった.多胎受胎の予測値の同定には,受信者動作特性曲線と順序ロジスティック回帰分析を用いた.
441 件の妊娠の内訳は,314 件が単児受胎による妊娠,88 件が 2 児受胎,22 件が 3 児受胎,10 件が 4 児受胎,5 件が 5 児受胎,2 件が 6 児受胎による妊娠であった.直径 16 mm 以上の卵胞の個数にも,エストラジオールの最高血清中濃度 2,000 pg/mL(7,3428 pmol/L)超または 2,500 pg/mL(9,178 pmol/L)超(現在広く使用されているカットオフ値)にも,高度多胎妊娠の発生との有意な関連は認められなかった.しかし,総卵胞数の多さと,エストラジオールの最高血清中濃度の高さには,高度多胎妊娠のリスクの高さとの有意な相関が認められ(p<0.001),年齢の低さにも,高度多胎妊娠のリスクの高さとの有意な相関が認められた(p=0.008).高度多胎妊娠のリスクは,エストラジオールの最高血清中濃度が 1,385 pg/mL(5,084 pmol/L)以上の女性で有意に高く(多変量オッズ比,1.9;95%信頼区間,1.3~2.8),排卵誘発日の卵胞数が 7 個以上の女性でも有意に高かった(多変量オッズ比,2.1;95%信頼区間,1.2~3.9).
不妊症の女性における高度多胎妊娠は,現在慣習的に行われているものほど強力ではないゴナドトロピンの卵巣刺激によって,その発生を減少させることができるかもしれないが,その程度には限界があり,全体の妊娠率の低下という代償も伴うだろう.