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August 3, 2000 Vol. 343 No. 5

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コルチコステロイドの低用量吸入と喘息による死亡の予防
Low-Dose Inhaled Corticosteroids and the Prevention of Death from Asthma

S. SUISSA, P. ERNST, S. BENAYOUN, M. BALTZAN, AND B. CAI

背景

コルチコステロイドの吸入は喘息の治療には有効であるが,喘息による死亡を予防できるかどうかについては明確ではない.

方 法

カナダ・サスカチュワン州保健局(Saskatchewan Health)のデータベースを用いて,1975~91 年の期間に抗喘息薬を使用していた年齢が 5~44 歳までのすべての対象者で構成される地域住民ベースのコホートを設定した.そして,これらの対象者を,1997 年の末まで,または対象者が 55 歳の誕生日を迎えた時点,死亡した時点,転出した時点,あるいは健康保険の適用期間が終了した時点のうちで,もっとも早く訪れた時点までの追跡調査を行った.コホート内症例対照研究を実施し,喘息で死亡した対象者には,それぞれの症例患者の死亡時点(指標日)における追跡調査の期間,本研究に組み入れられた時期,および喘息の重症度にしたがって,コホート内の対照患者をマッチさせた.このようにして,以下の項目で補正した喘息による死亡率比を算出した;対象者の年齢および性別;指標日までの 1 年間におけるテオフィリン,β-アドレナリン作動薬の噴霧剤および経口剤,およびコルチコステロイドの経口剤の処方数;指標日までの 1 年間に使用した吸入用β-アドレナリン作動薬の吸入容器の本数;および指標日までの 2 年間における喘息による入院回数.

結 果

コホートには 30,569 例が含まれた.562 件の死亡のうち,77 件が喘息による死亡と分類されていた.この喘息によって死亡した対象者のうちですべてのデータを入手することができた 66 例について,2,681 例の対照者をマッチさせた.死亡の前年に吸入用コルチコステロイドを使用していた患者は,症例患者の 53%と対照患者の 46%で,もっとも汎用されていたのはベクロメタゾンの低用量吸入であった.使用された吸入容器の平均本数は,症例患者が 1.18,対照患者が 1.57 であった.喘息による死亡率は,連続変量を用いた用量反応関係の分析では,死亡の前年に使用された吸入用コルチコステロイドの吸入容器が 1 本増加するごとに 21%低下すると算出された(補正死亡率比,0.79;95%信頼区間,0.65~0.97).コルチコステロイドの吸入を中止してから 3 ヵ月目までの喘息による死亡率は,吸入用コルチコステロイドを継続して使用していた患者の死亡率よりも高かった.

結 論

低用量コルチコステロイドの常用的吸入は,喘息による死亡のリスクの低下と関連している.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2000; 343 : 332 - 6. )