August 10, 2000 Vol. 343 No. 6
瘢痕ヘルニアに対する縫合修復とメッシュ修復の比較
A Comparison of Suture Repair with Mesh Repair for Incisional Hernia
R.W. LUIJENDIJK AND OTHERS
瘢痕ヘルニアは腹部手術の重要な合併症の一つである.これらのヘルニアの修復手技としては,縫合とメッシュによる修復が報告されているが,どちらのタイプの修復手技が最善であるかということについては合意が得られていない.
1992 年 3 月~1998 年 2 月に多施設共同試験を実施し,腹部の縦正中切開部位に発症した長さまたは幅が 6 cm 未満の初発ヘルニアあるいは初回再発ヘルニアの修復術を受ける予定になっていた 200 例の患者を,縫合修復またはメッシュ修復に無作為に割り付けた.患者には,術後 1,6,12,18,24 および 36 ヵ月目に,理学的検査による追跡調査を行った.再発率と瘢痕ヘルニア再発の危険因子と思われるものについては,生命表法を用いた解析を行った.
本試験の適格基準を満たしていた初発ヘルニアの患者 154 例と初回再発ヘルニアの患者 27 例のうち,追跡調査期間中に再発が確認された患者は 56 例であった.初発ヘルニア患者の 3 年累積再発率は,縫合修復を受けた患者が 43%,メッシュ修復を受けた患者が 24%であった(p=0.02;3 年累積再発率の差,19 パーセントポイント;95%信頼区間,3~35 パーセントポイント).初回再発ヘルニア患者の 3 年累積再発率は,それぞれ 58%および 20%であった(p=0.10;3 年累積再発率の差,38 パーセントポイント;95%信頼区間,-1~78 パーセントポイント).再発の危険因子は,縫合修復,感染,前立腺症(男性),腹部大動脈瘤の手術歴であった.しかし,ヘルニアの大きさには,再発率に対する影響は認めらなかった.
腹部の正中瘢痕ヘルニア患者では,ヘルニアの再発に対しては,その大きさにかかわらず,メッシュ修復が縫合修復よりも優れている.