August 17, 2000 Vol. 343 No. 7
米国国立心臓・肺・血液研究所から研究助成を受けた心血管疾患の臨床試験への女性の組入れ
Enrollment of Women in Cardiovascular Clinical Trials Funded by the National Heart, Lung, and Blood Institute
D.J. HARRIS AND P.S. DOUGLAS
心血管系疾患には性別に特異的な側面があるという認識のもと,米国政府は連邦政府が研究費を助成した臨床研究によって,女性の心疾患に関する適切で質の高い情報が確実に入手できるようにと努めている.
1965~98 年に,米国国立心臓・肺・血液研究所(NHLBI)からの研究費助成により実施された心血管系疾患の臨床試験に組み入れられた男性と女性の被験者数を表にまとめ,心血管系疾患全体と疾患別の被験者数を記録した.このデータを,その疾患の男女別の有病率に照らして分析するとともに,組入れの経時的な変化についても評価した.さらに,男性か女性のどちらか一方のみを対象としていたすべての試験を除外して,同様の解析を行った.
合計で 398,801 例の被験者(女性が 215,796 例,男性が 183,005 例)が,NHLBI の研究費助成による心血管系疾患の試験に組み入れられていた.これらの試験全体の女性の組み入れ率(54%)は,一般集団における女性の心血管系疾患全体の有病率(49%)を上回っており,経時的に上昇していた(p=0.002).男女のどちらか一方のみを対象としていた試験を除外すると,女性の組み入れ率は 38%となり,この組み入れ率には有意な経時的変化は認められなくなった.疾患別の女性の組み入れ率は,冠動脈疾患と高血圧症の試験では,その疾患の女性の有病率と同程度か,上回っていた.これを経時的にみてみると,冠動脈疾患の試験では有意に上昇していたが(p<0.001),高血圧症や不整脈の試験では有意な変化は認められなかった.心不全の試験については,女性は十分には試験に組み入れられておらず,その組み入れ率にも有意な経時的変化は認められなかった.この有病率に照らし合わせた疾患別の組み入れ率の分析から,男女のどちらか一方のみを対象としていたすべての試験を除外しても,同様の結果であった.また,どの疾患の組み入れ率にも経時的な変化は認められなかった.
臨床試験に女性の対象者を増加させるための連邦政府の努力はある程度成功しているが,それは主として,冠動脈疾患に関する女性のみの大規模試験が少数組織されたことによるものである.心血管系疾患の大多数の試験においては,その被験者集団の男女構成は変化していない.