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August 24, 2000 Vol. 343 No. 8

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中国人患者におけるヘモグロビン H 症の遺伝学的および臨床的特性
Genetic and Clinical Features of Hemoglobin H Disease in Chinese Patients

F.E. CHEN AND OTHERS

背景

αグロビンの二つの遺伝子,すなわちα1 遺伝子とα2 遺伝子は,正常には,16 番染色体の各染色体上に 1 対ずつ存在している.ところが,ヘモグロビン H 症では,これらの 4 個のαグロビン遺伝子のうちの 3 個が,欠失,突然変異,あるいはその両方によって障害されている.今回,われわれは,ヘモグロビン H 症の香港中国人患者を対象として,そのαグロビン遺伝子の異常と臨床的および血液学的特性について検討した.

方 法

ヘモグロビン H 症の 114 例の患者の臨床特性,血液学的検査の値,血清フェリチン濃度,肝機能について評価を行った.さらに,心エコー検査と肝臓の磁気共鳴画像法(MRI)を実施し,αグロビンの二つの遺伝子対の検査も行った.

結 果

114 例のうち,87 例(76%)のヘモグロビン H 症は,4 個のαグロビン遺伝子の 3 個の欠失によるもので(––/–α),欠失型のヘモグロビン H 症と呼ばる遺伝子の組合せであった.残りの 27 例(24%)は非欠失型のヘモグロビン H 症で,この病型では,αグロビン遺伝子の 2 個が欠失し,もう 1 個が変異している(––/ααT).さらに,欠失型のヘモグロビン H 症であった 87 例はすべて,これらの二つの遺伝子の二重ヘテロ接合体であった.すなわち,片方の染色体上のαグロビン遺伝子は 2 個とも欠失し,もう一方の染色体上のα1 遺伝子とα2 遺伝子のどちらか 1 個が欠失していた(––/α– または ––/–α).非欠失型のヘモグロビン H 症の患者では,さまざまな変異をもつαグロビン遺伝子が発見された.非欠失型のヘモグロビン H 症の患者は,欠失型の患者と比較して,低年齢で症状数が多く,溶血性貧血は重症で,脾臓が大きく,輸血を必要とする可能性が高かった.鉄過剰の重症度は,遺伝子型とは関連していなかった.

結 論

ヘモグロビン H 症の香港中国人患者では,非欠失型の患者のほうが,欠失型の患者よりも重症である.しかし,ヘモグロビン H 症のいずれの病型においても,鉄過剰が障害の大きな原因であった.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2000; 343 : 544 - 50. )