September 7, 2000 Vol. 343 No. 10
ある新生児集中治療室において限局的に流行した Psuedomonas aeruginosa(緑膿菌)感染
Endemic Psuedomonas aeruginosa Infection in a Neonatal Intensive Care Unit
M. FOCA AND OTHERS
Psuedomonas aeruginosa(緑膿菌)による院内感染症については詳しく解説されているが,この微生物を保菌している環境内の宿主は多様である.今回,われわれは,新生児集中治療室に収容されていた新生児において限局的に流行し,医療従事者の手を介して運ばれた微生物との関連が認められた P. aeruginosa 感染について,疫学的および分子学的な検討を行った.
1998 年 8 月に,6 例の新生児において,培養による P. aeruginosa のコロニー形成あるいは P. aeruginosa による感染が確認された.そこで,この集中治療室に収容されていた他の 27 例の新生児にも P. aeruginosa の監視培養を行うとともに,可能性が考えられる環境内の保菌宿主の評価も行った.医療従事者の手についても検査し,手から採取した検体を培養して,培養で P. aeruginosa のコロニーが形成される危険因子についての評価を行った.分離株については,パルスフィールドゲル電気泳動法によって,クローン性の分析を行った.
監視培養では,さらに 3 例の新生児で P. aeruginosa のコロニー形成が示された.環境検体の培養結果は陰性であったが,165 例の医療従事者の手から採取した検体の培養では,10 例(6%)の手の検体から P. aeruginosa 陽性の結果が得られた.年齢がより高いこと(p = 0.05)と,付け爪またはネイルラップの使用歴(p = 0.03)が,手におけるコロニー形成の危険因子であった.1997 年 1 月~1998 年 8 月までに,49 例の新生児において,P. aeruginosa による感染あるいは P. aeruginosa のコロニー形成が確認された.P. aeruginosa のパルスフィールドゲル電気泳動法では,このうち 17 例の新生児と,爪真菌症であった 1 例の医療従事者からの分離株が同一クローンであることが証明された.さらに,1998 年 8 月にこの医療従事者に曝露された新生児は,曝露されなかった新生児よりも,このクローンを保有しているリスクが高かった(オッズ比,41.2;95%信頼区間,1.8~940.0;p = 0.006).
新生児集中治療室の新生児において P. aeruginosa 感染と P. aeruginosa のコロニー形成が認められる割合が増加した場合には,環境内の感染源のほか,患者や医療従事者など,可能性のある保菌宿主(reservoir)を評価して,調査すべきである.