April 26, 2001 Vol. 344 No. 17
2~5 歳の小児に対するチフス菌 Vi 結合ワクチンの有効性
The Efficacy of a Salmonella typhi Vi Conjugate Vaccine in Two-to-Five-Year-Old Children
F.Y.C. LIN AND OTHERS
腸チフスは発展途上国ではよくみられる病気である.認可されている腸チフスワクチンは約 70%に免疫ができるのみで,幼児の腸チフスを予防することができず,通常のワクチン予防接種には使用されない.チフス菌の莢膜多糖類と遺伝子組換え無毒緑膿菌外毒素 A(rEPA)とを結合させることによって新しく開発された Vi 結合ワクチンは,成人および 5~14 歳の小児において免疫原性が強化されているとともに,2~4 歳の小児においても追加免疫応答を誘導させる.
二重盲検無作為試験にて,ベトナム Dong Thap 省の 16 の地方自治体に住んでいる 2~5 歳の小児を対象として,Vi-rEPA ワクチンの安全性,免疫原性,および有効性の評価を行った.11,091 例の小児のそれぞれが,Vi-rEPA または食塩水のプラセボを 6 週間の間隔をおいて 2 回接種を受けた.腸チフスの症例は,発熱(体温≧37.5℃)が 3 日以上持続したあとの血液培養での S. typhi(チフス菌)の分離によって診断し,27 ヵ月間にわたる能動的監視で確定した.ワクチンの有効性は,ワクチン群とプラセボ群の腸チフスの発症率を比較することによって推定した.
S. typhi は,Vi-rEPA ワクチンの接種をすべて受けた 5,525 例の小児のうちの 4 例と,プラセボの 2 回の接種を受けた 5,566 例の小児 47 例から分離された(有効性,91.5%;95%信頼区間,77.1~96.6%;p<0.001).1 回の接種しか受けなかった 771 例の小児については,腸チフスの症例は,ワクチン群では 1 例,プラセボ群では 8 例であった.腸チフスの症例は,すべての年齢層および試験の全期間にわたって均等に分布していた.重篤な有害反応はなにも観察されなかった.2 回目のワクチン接種後 4 週目に検査した 36 例のすべての小児において,血清中の IgG Vi 抗体の濃度は 10 倍以上に上昇した.
腸チフスの Vi-rEPA 結合ワクチンは,2~5 歳の小児において安全かつ免疫原性が高く,90%を超える有効性が得られる.この試験で認められた抗体産生応答と有効性から,このワクチンには,5 歳をすぎた人々においても少なくとも同程度の予防効果があるものと示唆される.