急性心筋梗塞後の心カテーテルの実施における人種差
Racial Differences in the Use of Cardiac Catheterization after Acute Myocardial Infarction
J. CHEN, S.S. RATHORE, M.J. RADFORD, Y. WANG, AND H.M. KRUMHOLZ
急性心筋梗塞後の心カテーテルは白人患者よりも黒人患者で実施されにくい傾向があるということが,いくつかの研究で報告されている.しかしながら,この傾向における医師の人種の役割はわかっていない.
急性心筋梗塞発症後 60 日以内の心カテーテルの実施には黒人患者と白人患者のあいだに差が認められているが,これらの差に,その担当医師の人種による違いが存在しているのか否かを評価するために,1994 年および 1995 年に急性心筋梗塞で入院していたメディケア(老齢者医療保障制度)受給者を対象とした試験である「共同心血管プロジェクト(the Cooperative Cardiovascular Project)」のデータを分析した.
この研究のコホートは,白人医師 17,550 例と黒人医師 588 例に治療された急性心筋梗塞の白人患者 35,676 例と黒人患者 4,039 例であった.黒人患者における心カテーテルの実施率は,その担当医師が白人であったか(黒人および白人患者のカテーテル検査の実施率,38.4% 対 45.7%;p< 0.001),あるいは黒人であったか(38.2% 対 49.6%;p<0.001)にはかかわりなく,白人患者の心カテーテルの実施率よりも低くかった.心カテーテルの実施には,患者の人種と医師の人種との有意な交互作用は認められなかった.梗塞発症後 3 年目までの時点における黒人患者の補正死亡率は,白人患者の補正死亡率よりも低いか,同程度であった.
心カテーテルの実施の人種差は,白人医師によって治療された患者においても,黒人医師によって治療された患者においても同程度であるので,医療におけるこのパターンは医師の人種とは独立したものであることが示唆される.