フルオロキノロン耐性サルモネラ感染症の院内発生
A Nosocomial Outbreak of Fluoroquinolone-Resistant Salmonella Infection
S.J. OLSEN AND OTHERS
サルモネラ菌のフルオロキノロン耐性株による感染症はまれな疾患であり,院内感染症としてもまれである.われわれは,米国ではじめて確認されたフルオロキノロン耐性サルモネラ感染症の集団発生について報告する.オレゴン州のナーシングホーム 2 施設と病院 1 施設で発生したものであった.
医療従事者への面接と,患者の病歴と死亡証明書の再調査を行った.そして,ナーシングホーム A で,症例対照研究を実施した.患者は,1996 年 2 月~1998 年 12 月までの期間に,Schwarzengrund 血清型のフルオロキノロン耐性 Salmonella enterica が分離されたナーシングホームの入居者と定義した.対照は,患者と同様の病態であったが,培養検査ではサルモネラ菌が分離されなかった入居者であった.
2 施設のナーシングホームで,フルオロキノロン耐性サルモネラ症の患者が 11 例同定された.このうち尿培養が陽性であった患者は 9 例,便培養が陽性であった患者は 1 例,創傷培養が陽性であった患者は 1 例であった.発端患者はフィリピンで入院したことがあったので,おそらく,そこで感染したのであろうと考えられた.その伝播は,おそらく直接(患者から患者へ)か,あるいは汚染面との接触によるものと考えられた.サルモネラ感染症の有意なリスクとの関連が認められたのは,培養検査されるまでの 6 ヵ月間に行われたフルオロキノロンの治療であった.フルオロキノロンの使用は,オレゴン州の同様のナーシングホームよりも,ナーシングホーム A で多かった.院内発生で分離されたサルモネラ菌は,パルスフィールドゲル電気泳動のパターンが類似しており,同じ gyrA 突然変異を保有していた.また,分離されたサルモネラ菌は,米国でこれまでに検出されている唯一のフルオロキノロン耐性サルモネラ菌ともよく似ていた.その臨床分離株も,フィリピンの病院から移送されてきたニューヨークの患者から分離されたものであった.
われわれは,Schwarzengrund 血清型のフルオロキノロン耐性 S. enterica 感染症の,長期化した院内発生について報告した.このような院内発生は,医療施設内の環境,とくに抗菌薬を大量に使用している環境において,さらに多く発生するだろうと考えられる.