January 18, 2001 Vol. 344 No. 3
外来受診時の医師による診察時間は短縮しているのか?
Are Patients' Office Visits with Physicians Getting Shorter?
D. MECHANIC, D.D. MCALPINE, AND M. ROSENTHAL
多くの人々は,マネージドケアが,医師に対して,生産性の向上,診療患者数の増加,および患者 1 人当りに費やす診察時間の短縮を強いるような圧力をかけることになっていると考えている.
1989~98 年の医師による診察時間を調べるために,米国国立衛生統計センター(National Center for Health Statistics)による全米外来医療調査(National Ambulatory Medical Care Survey:NAMCS)と,米国医師会(AMA)の社会経済監視システム(Socioeconomic Monitoring System:SMS)の,全米の代表的データを利用した.これらのデータを利用して,プライマリケアと専門医療,新患と再来患者,および一般的な診断と重大な診断に関する,マネージドケアや他の前払い医療保険政策(前払い受診)によって保障されている受診と,非前払い受診の傾向について評価した.
医師への受診件数は,1989 年から 1998 年にかけて 67,700 万件から 79,700 万件へと有意に増加していたが,人口 100 人当りの受診率には有意な変化は認められなかった.1989 年における外来受診時の平均診察時間は,MAMCS のデータでは 16.3 分間,SMS 調査のデータでは 20.4 分間であった.いずれのデータにおいても,平均診察時間は,1989 年から 1998 年にかけて,1~2 分間増加していた.さらに,前払い受診と非前払い受診のいずれにおいても,その診察時間は増加していた.非前払い受診の診察時間は前払い受診よりも一貫して長かったものの,これらの医療保険制度による診察時間の差は,1989 年には 1 分間であったのが,1998 年には 0.6 分間に減少していた.また,この診察時間の増加傾向は,プライマリケアと専門医療のいずれにおいても,また新患と再来患者のいずれにおいても認められた.もっとも頻度の高い診断を受けた患者と,もっとも深刻な診断を受けた患者における平均の診察時間は,変化がないか,増加していた.
期待に反して,マネージドケアの浸透は,医師による診察時間の短縮には結びついていなかった.観察された傾向は,医師の利用率の上昇,医師の性別分布の推移,ケースミックス(患者の分類)の複雑性の変化のいずれによっても,説明することはできない.