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January 25, 2001 Vol. 344 No. 4

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クロロキン耐性熱帯熱マラリアの分子マーカー
A Molecular Marker for Chloroquine-Resistant Falciparum Malaria

A. DJIMDE AND OTHERS

背景

クロロキン耐性熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)によるマラリアは,とくにサハラ砂漠以南のアフリカでは,保健衛生の大きな問題である.このクロロキン耐性は,in vitro では,熱帯熱マラリア原虫の pfcrtpfmdr1 遺伝子の点突然変異と結び付けられている.これらの遺伝子は消化性空胞の膜貫通蛋白である PfCRT と Pgh1 をそれぞれコードしている.

方 法

これらの突然変異の臨床的なクロロキン耐性のマーカーとしての価値を評価するために,マリにおいて合併症のない熱帯熱マラリアの患者を対象として,これらの突然変異とクロロキン治療に対する反応の関連について検討した.クロロキンに曝露した結果,耐性因子は選択されるので,患者における突然変異の頻度を治療の前後において比較した.

結 果

76 番目のリジンをスレオニンに置換させる突然変異の pfct(T76)は,クロロキン耐性感染症の患者(感染症が治療後も持続あるいは再発した患者)から採取した 60 検体のすべてに存在していたのに対して,無作為に抽出した 116 例の患者から治療前に採取した検体におけるベースライン保因率は 41%であった(p<0.001).このことは,この突然変異が完全に選択されたことを示している.86 番目のアスパラギンをチロシンに置換させる突然変異の pfmdr1(Y86)については,クロロキン耐性感染症の患者から治療後に採取した 56 検体では 48 検体(86%)に存在していたのに対して,治療前に採取した 115 検体から求めたベースライン保因率は 50%であったので(p<0.001),この突然変異にも選択が働いていた.さらに,クロロキンに対する耐性の獲得には,pfcrt T76 を保因していることが(オッズ比,18.8;95%信頼区間,6.5~58.3),pfmdr1 Y86 を保因していること(オッズ比,3.2;95%信頼区間,1.5~6.8),あるいはこれらの両方の突然変異を保因していること(オッズ比,9.8;95%信頼区間,4.4~22.1)よりも強く関連していた.

結 論

この研究は,熱帯熱マラリア原虫の pfcrt T76 突然変異とマラリア治療中におけるクロロキンに対する耐性の獲得に関連があることを示すものである.この突然変異は,クロロキン耐性熱帯熱マラリアの監視において,一つのマーカーとして使用することができるだろう.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2001; 344 : 257 - 63. )