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February 22, 2001 Vol. 344 No. 8

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遺伝性乳癌における遺伝子発現プロファイル
Gene-Expression Profiles in Hereditary Breast Cancer

I. HEDENFALK AND OTHERS

背景

遺伝性乳癌の多くの症例は,BRCA1 または BRCA2 のいずれかの遺伝子の変異によるものである.これらの癌にみられる組織病理学的変化は,多くの場合,その変異遺伝子に特徴的である.われわれは,これらの二つの腫瘍型によって発現される遺伝子も異なっており,そのため遺伝性乳癌の症例を遺伝子発現プロファイルに基づいて識別することができるのではないかという仮説を立てた.

方 法

BRCA1 変異保有者 7 例,BRCA2 変異保有者 7 例,散発性乳癌の患者 7 例から採取した原発腫瘍の検体の RNA を,5,361 個の遺伝子から採取した相補 DNA のマイクロアレイ 6,512 個と結合させた.統計解析の手法を用いて,BRCA1BRCA2 の遺伝子型を区別できるような遺伝子セットを同定した.

結 果

多変量分類関数による置換分析からは,BRCA1 に変異がある腫瘍,BRCA2 に変異がある腫瘍,および散発性腫瘍の遺伝子発現プロファイルが,互いに有意に異なっていることが確証された.検体の遺伝子発現のレベルと遺伝子型の分散分析からは,BRCA1 に変異がある腫瘍と BRCA2 に変異がある腫瘍で,その発現が異なっていた遺伝子を 176 個同定することができた.今回使用した遺伝子パネルに含まれている遺伝子のいくつかは,その特性がわかっていることを考えると,ここで得られた結果は,BRCA1 に変異がある乳癌と BRCA2 に変異がある乳癌には機能的な差が存在することを示している.

結 論

BRCA1 に変異がある乳癌と BRCA2 に変異がある乳癌によって発現される遺伝子群は,有意に異なっている.この研究で得られた結果は,遺伝しうる変異が癌の遺伝子発現プロファイルに影響を及ぼすことを示唆している.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2001; 344 : 539 - 48. )