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March 8, 2001 Vol. 344 No. 10

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硬化性膵炎患者における血清 IgG4 濃度の上昇
High Serum IgG4 Concentrations in Patients with Sclerosing Pancreatitis

H. HAMANO AND OTHERS

背景

硬化性膵炎(自己免疫性膵炎)は,主膵管の不整狭細化,膵組織のリンパ球や形質細胞浸潤を伴う炎症,および高ガンマグロブリン血症などの特徴が認められ,グルココルチコイド治療に反応する特異な膵炎である.予備試験において,IgG4 の血清中濃度が,この疾患では上昇しているが,これ以外の膵臓および胆道系の疾患では上昇していないことが示唆された.

方 法

硬化性膵炎の患者 20 例,これらの患者と年齢および性別を一致させた健常人 20 例,および膵臓癌,通常の慢性膵炎,原発性胆汁性肝硬変,原発性硬化性胆管炎,シェーグレン症候群の患者 154 例において,IgG4 の血清中濃度を,単純放射状免疫拡散法(SRID 法)と酵素免疫測定法(ELISA 法)を用いて測定した.免疫複合体と IgG4 型免疫複合体の血清中濃度についても,モノクローナルリウマチ因子を用いた酵素免疫測定法で測定した.

結 果

血清 IgG4 濃度の中央値は,硬化性膵炎の患者では 663 mg/dL(5 パーセンタイルおよび 95 パーセンタイル,136 mg/dL および 1,150 mg/dL)であったのに対して,健常人は 51 mg/dL(5 パーセンタイルおよび 95 パーセンタイル,15 mg/dL および 128 mg/dL)であった(p<0.001).硬化性膵炎以外の患者集団の血清 IgG4 濃度は,健常人の濃度と同程度であった.また,硬化性膵炎の患者では,免疫複合体と IgG4 型免疫複合体の血清中濃度は,グルココルチド療法を開始する前の値が,グルココルチコイド療法を 4 週間実施した後の値よりも有意に高かった.そして,このグルココルチコイド療法により,臨床症状は寛解し,IgG4,免疫複合体,および IgG4 型免疫複合体血清中濃度は有意に低下した.

結 論

硬化性膵炎の患者は血清 IgG4 濃度が高値であるので,この血清 IGg4 濃度測定が,硬化性膵炎を他の膵臓または胆道系の疾患と鑑別する有用な方法になる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2001; 344 : 732 - 8. )