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October 18, 2001 Vol. 345 No. 16

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テネイシン-X 欠損症によって発症するエーラス–ダンロス症候群の劣性型
A Recessive Form of the Ehlers–Danlos Syndrome Caused by Tenascin-X Deficiency

J. SCHALKWIJK AND OTHERS

背景

エーラス–ダンロス症候群は,原線維コラーゲン代謝の欠陥によって引き起される遺伝性の結合組織病である.典型的なエーラス–ダンロス症候群の 50%に及ぶ症例が V 型コラーゲン遺伝子の突然変異によって説明されるが,その他の多くの症例の原因は説明されていない.結合組織に強く発現されている細胞外基質蛋白質であるテネイシンの欠損症が,エーラス–ダンロス症候群に関連しているのかどうかについて検討した.

方 法

典型型,過剰運動型,および血管型のエーラス–ダンロス症候群の患者 151 例,乾癬患者 75 例,関節リウマチ患者 93 例,および健常人 21 例の血清検体を採取し,酵素免疫測定法(ELISA)により,テネイシン-X およびテネイシン-C の存在をスクリーニングした.皮膚におけるテネイシンおよびV 型コラーゲンの発現を,免疫組織化学的な方法によって調べるとともに,テネイシン-X 遺伝子の塩基配列を決定した.

結 果

テネイシン-X は,正常被験者の全例,乾癬患者の全例,慢性関節リウマチ患者の全例,およびエーラス–ダンロス症候群の患者 151 例中の 146 例の血清に存在していた.血縁関係ではなかったエーラス–ダンロス症候群の残りの 5 例の患者の血清には,テネイシン-X は存在していなかった.これらの患者では,皮膚の線維芽細胞の分析および皮膚の免疫染色によって,テネイシン-X 欠損症であることが確認された.これらの患者は,テネイシン- C および V 型コラーゲンの発現は正常であった.これらの患者の 5 例すべてにおいて,関節の過可動性,皮膚の過弾力性,および易挫傷性が認められたが,萎縮性瘢痕は存在していなかった.テネイシン-X の突然変異は,テネイシン-X 欠損症のすべての患者において同定された;1 例の患者はテネイシン-X 遺伝子の欠失のホモ接合,1 例はこの欠失のヘテロ接合,ほかの 3 例は先端が欠失するトランケイティング点突然変異のホモ接合であり,テネイシン-X の病因としての役割と遺伝の劣性パターンを確証するものであった.

結 論

テネイシン-X 欠損症は,臨床的にはまったく別の,劣性型のエーラス–ダンロス症候群を引き起す.ここで得られた結果は,コラーゲンやコラーゲン加工酵素以外の要因がこの症候群の原因である可能性を指摘し,コラーゲン基質の完全性の維持におけるテネイシン-X の中心的役割を示唆している.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2001; 345 : 1167 - 75. )