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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

April 5, 2001
Vol. 344 No. 14

  • 慢性骨髄性白血病における BCR-ABL チロシンキナーゼの抑制
    An Inhibitor of the BCR-ABL Tyrosine Kinase in Chronic Myeloid Leukemia

    慢性骨髄性白血病における BCR-ABL チロシンキナーゼの抑制

    BCR-ABL は,チロシンキナーゼ活性を有するキメラ蛋白であり,フィラデルフィア染色体の形成によって産生され,慢性骨髄性白血病の原因となる.BCR-ABL 酵素活性の特異的阻害剤である STI571 の評価を,従来の治療が無効の慢性骨髄性白血病患者を対象に行った.薬剤の忍容性は高く,1 日 300 mg 以上の投与を受けた患者のほぼ全例が治療に反応した.

  • 慢性骨髄性白血病の急性転化における BCR-ABL チロシンキナーゼ阻害剤
    A BCR-ABL Tyrosine Kinase Inhibitor in the Blast Crisis of Chronic Myeloid Leukemia

    慢性骨髄性白血病の急性転化における BCR-ABL チロシンキナーゼ阻害剤

    この論文は,慢性骨髄性白血病の急性転化と,フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病の患者に対する STI571 の臨床試験の報告であり,本誌に同時に掲載された,慢性骨髄性白血病に対する STI571 の研究と対をなすものである.患者全例で,標準的な化学療法が無効か再発が生じており,その結果として予後不良であった.STI571 により,骨髄性とリンパ性どちらの急性転化でも,また急性リンパ芽球性白血病でも,血液学的反応がみられた.しかし,後者の患者 20 例では,1 例を除く全例で再発が生じた.それに対して骨髄性急性転化の患者 38 例中の 7 例では,治療開始後最長 1 年間にわたって寛解が維持されている.
    STI571 は,慢性骨髄性白血病の慢性期と急性転化の双方に対する,新規の治療薬剤である.この薬剤の開発は,BCR-ABL 融合蛋白が,構成的に活性化されているチロシンキナーゼであることを示す研究がきっかけと なっている.この酵素は,細胞増殖を制御するシグナル伝達経路で中心的な役割を果しており,間断のない活性が慢性骨髄性白血病を引き起こす.STI571 による治療成績は,慢性骨髄性白血病では劇的だったが,慢性骨髄性白血病の急性転化に対する治療成績はそれほど顕著ではなかった.BCR-ABL チロシンキナーゼは,慢性骨髄性白血病の慢性期と増悪期のどちらにも存在するので,慢性骨髄性白血病の二つの病期の相違を検索するうえで STI571 が有用かもしれない.

  • 転移性消化管間質性腫瘍に対する STI571 の効果
    Effect of STI571 on a Metastatic Gastrointestinal Stromal Tumor

    転移性消化管間質性腫瘍に対する STI571 の効果

    消化管間質性腫瘍は,チロシンキナーゼ活性を有する増殖因子受容体の c-kit が,変異により間断なく発現している原始的な結合組織細胞から発生する.結合組織細胞では,チロシンキナーゼ活性を有する成長因子受容体の c-kit が間断なく発現する変異が生じている.消化管間質性腫瘍の患者 1 例が,さまざまな治療に抵抗性であったが,チロシンキナーゼ阻害剤である STI571 による治療に迅速に反応した.
    この症例報告は,STI571 が,慢性骨髄性白血病に対する効果に加えて,活性チロシンキナーゼが構成的に発現している固形腫瘍に対しても有効な可能性を示唆している.

  • 心房細動の患者における房室結節アブレーションと恒久的ペースメーカ植込み後の長期生存
    Long-Term Survival after Atrioventricular-Node Ablation and Implantation of a Permanent Pacemaker in Patients with Atrial Fibrillation

    心房細動の患者の一部では,洞調律が維持できず,心拍数を制御できないため,不整脈が薬物治療に対して不応性である.これに代わる治療法は,房室結節にアブレーションを行い(その結果完全な心ブロックを生じさせ),その後恒久的ペースメーカを植込むことだが,この手技の長期的な帰結に対する懸念が存在する.今回の研究は,このアプローチが長期生存に悪影響を及ぼさないことを示した.
    不応性の慢性心房細動は,重篤で消耗性の問題となることがある.患者によっては,房室結節のアブレーションとペースメーカの植込みによって症状が減弱し,QOL が改善する場合がある.今回の研究は,恒久的な心ブロックを生じさせる本手技によって,生存率がわるくならないという保証をもたらすものである.

  • 免疫学の進歩:補体
    Advances in Immunology: Complement

    免疫学の進歩:補体

    補体は,多数の蛋白質の構成要素からなるシステムであり,抗体に覆われた細胞を溶解する能力がもっともよく知られている.補体系には,とくに免疫系の調節や死滅した細胞の処理に関連した別の作用があることが,過去数年間で明らかになった.この論文は,補体系に関する,2 部からなる総説の前半である.今回は補体系の異常に関連する疾患を中心にまとめている.

  • 医療の進歩:心房細動
    Medical Progress: Atrial Fibrillation

    心房細動は,臨床診療でもっともよく遭遇する不整脈の一つである.近年,心房細動の病態生理の理解,抗凝固療法を含めた薬物療法,房室結節のアブレーションとペースメーカ植込みの併用などの非薬物療法について,顕著な進歩がみられる.この総説は,これらの問題を包括的に論じている.

  • Clinical Problem-Solving:少ないほど多い
    Clinical Problem-Solving: Less Is More

    Clinical Problem-Solving:少ないほど多い

    この症例報告では,精製蛋白誘導体による結核皮膚検査で以前陽性反応を示した,2 型糖尿病の 63 歳女性が,倦怠感,食欲不振,意図しない体重減少で受診した.患者の血清アミノトランスフェラーゼ値とアルカリフォスファターゼ値が上昇していた.その後,左眼の眼瞼下垂と結膜充血が生じた.