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This Week at NEJM.org
NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.
April 19, 2001
Vol. 344 No. 16
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持続性中耳炎に対する中耳腔換気用チューブ挿入後の発達に関する転帰
Developmental Outcomes after Placement of Tympanostomy Tubes for Persistent Otitis Media持続性の滲出性中耳炎の小児は,聴力,会話,認知機能の発達障害の可能性に対する懸念から,中耳腔換気用チューブによる治療を受けることが多い.この研究では,滲出液が持続する乳幼児 429 例を無作為に割付け,中耳腔換気用 チューブ挿入をできるだけ早期に実施するか,または最長 9 ヵ月待機して滲出液が持続している場合に実施した.会話,言語,認知,親-子間ストレス,行動に関する検査得点は,2 群間で有意差がなかった.
滲出性中耳炎の治療として,中耳腔換気用チューブが挿入されることが多い.この治療法に,聴力,行動,認知機能の発達に関する長期的利益がほとんどないことを,この研究結果は示している. -
中耳腔換気用チューブ挿入の転帰における,補助的アデノイド切除術と扁桃切除術の役割
Role of Adjuvant Adenoidectomy and Tonsillectomy in the Outcome of the Insertion of Tympanostomy Tubes中耳炎の小児に対する通常の外科的治療は,中耳腔換気用チューブ挿入を伴う鼓膜切開術である.中耳腔換気用チューブ挿入を施行した小児 37,316 例を対象とするこの研究では,補助的アデノイド切除術により,中耳腔換気用チューブの再挿入や,中耳炎に関する病態での再入院の確率が,半分に低下した.補助的扁桃切除術のほうが有用性はさらに大きかった.
補助的アデノイド切除術と扁桃切除術によって,中耳炎に関して追加的な治療手技を行うための再入院の必要性が減少する.追加的な侵襲的治療を必要としない程度の中耳炎の再発確率が,どの程度低下するかは明らかでないが,おそらく相当大きく低下するだろう. -
結腸癌化学療法後の生存に関する分子予測因子
Molecular Predictors of Survival after Chemotherapy for Colon Cancerこの研究では,結腸癌の III 期および高リスクの II 期の患者からの,450 例を超える腫瘍標本を用いてさまざまな分子学的異常を評価し,その結果と補助的化学療法後の生存とを関連させて分析した.18 番染色体長腕からの遺伝物質の喪失が,生存期間の短縮と相関していた.一方,高度のマイクロサテライト不安定性と,トランスフォーミング増殖因子β1 II 型受容体の遺伝子変異との組み合せが,良好な予後と関連していた.
術後化学療法は,中等度進行大腸癌の患者の大半において,依然として治療の主流である.しかし,化学療法の実施に関する判断が,つねに容易とは限らない.この研究は,患者の腫瘍の分子的特徴に基づいて,治療を個別化する方法を示している. -
ラロキシフェンの治療を受けた閉経後女性の認知機能
Cognitive Function in Postmenopausal Women Treated with Raloxifene閉経後女性に対するエストロゲン投与により,加齢に伴う認知機能の低下が遅延し,場合によっては認知機能が改善するか否かについて,これまでの知見は一致しない.この研究では,7,000 例を超える閉経後女性を対象に,選択的エストロゲン受容体修飾因子であるラロキシフェンの,6 種類の認知機能検査得点に対する効果を評価した.本来この研究は,ラロキシフェンの骨粗鬆症に対する効果を評価するためにデザインされたものだが,認知機能に関する検査も含まれていた.プラセボと比べ,ラロキシフェンでは,認知機能に対する効果はなく,ほてりが生じた女性がより多かった.
ラロキシフェンのような薬剤は,骨ではエストロゲン作動薬として作用するが,乳房と子宮内膜組織,また視床下部組織では,エストロゲン拮抗薬として作用するため,ほてりが増加する.認知機能に対するラロキシフェンの効果の欠如によって,この薬剤の骨に対する有用性が減じるわけではないが,薬剤の価値が高まるわけでもない.生理学的な見地からすれば,ラロキシフェンには認知機能に対する効果がないことがわかっても,エストロゲンそのものが閉経後女性の認知機能に影響するか否かを明らかにするうえで,ほとんど役には立たない. -
現在の概念:脳死の診断
Current Concepts: The Diagnosis of Brain Death臨床神経学的検査は,脳死の決定に対する,依然として標準的な手段である.この総説では,こうした検査のさいに従うべき手順を詳細に解説し,脳血管造影,脳波記録,テクネシウム核スキャンなどの確証的検査の役割について説明している.
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医学の進歩:静脈血栓症の遺伝的感受性
Medical Progress: Genetic Susceptibility to Venous Thrombosisこの論文は,静脈血栓症に対する感受性を増大させる遺伝的障害の機序,診断,管理に関する,包括的な総説である.事例として,第 V 因子(Leiden V 因子)やプロトロンビンの発現をコードする遺伝子の変異などが示されている.