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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

May 10, 2001
Vol. 344 No. 19

  • 心房細動患者の除細動のガイドとしての経食道心臓超音波検査の利用
    Use of Transesophageal Echocardiography to Guide Cardioversion in Patients with Atrial Fibrillation

    除細動を要する心房細動に対する従来の管理法では,除細動の実施前に,3 週間のワーファリンによる抗凝固治療が必要である.この研究では,除細動の前に経食道心臓超音波検査を行い,心房血栓を検索した.血栓が存在しない場合には,短期間の抗凝固治療のあとに除細動を実施した.この治療法は,安全で,除細動が成功するまでの期間がずっと短いという結果であった.
    この研究の結果は,心房細動の患者で,経食道心臓超音波検査で心房血栓の所見を認めない者に対して,除細動を迅速に実施するための基準をもたらすものである.経験を積んだ施設では,このアプローチは従来の治療法よりも有利である.

    • 鉛に曝露した小児におけるキレート化治療と神経心理学的発達
      Chelation Therapy and Neuropsychological Development in Children Exposed to Lead

      鉛に曝露した小児におけるキレート化治療と神経心理学的発達

      この無作為割付け臨床試験では,血中鉛濃度が 20~40 μg/dL の小児を,キレート化剤のサクシマー(succimer)かプラセボのいずれかに割付けた.サクシマーによる治療で,血中鉛濃度は低下した.しかし,36 ヵ月後の,小児が約 5 歳の時点では,IQ スコア,行動学的検査得点,神経心理学的発達検査得点に,二群間の有意差を認めなかった.
      対照群を慎重に設定した今回の臨床試験では,小児に対するキレート化治療の利益は認められなかった.サクシマー治療により,知能,行動,線形的成長に関する転帰は,プラセボより若干劣る傾向があった.中等度の血中鉛濃度の小児に対して,キレート化治療を推奨することはできない.

      • ある地域におけるバンコマイシン耐性腸球菌管理
        Control of Vancomycin-Resistant Enterococcal Infections in a Region

        ある地域におけるバンコマイシン耐性腸球菌管理

        アイオワ州,ネブラスカ州,サウスダコタ州のスーランド地域では,バンコマイシン耐性腸球菌が,1996 年にはじめて検出された.1997 年に地域内の全 32 医療施設が,監視用の培養検体を提供し,感染患者を隔離するという勧告を実施に移した.耐性菌の保菌率は,1997 年の 2.2%から,1998 年には 1.4%,1999 年には 0.5%と低下した.
        いったんバンコマイシン耐性腸球菌が医療施設に現れると,集団的に感染することが多く,感染の制圧や除去は非常に困難である.協調的な対策により,多くの施設で,コロニーの形成率の低下や感染症の消滅が実現しうることを,今回の報告は示している.

        • 閉経女性における骨折と骨密度に対する副甲状腺ホルモン(1-34)の効果
          Effect of Parathyroid Hormone (1-34) on Fractures and Bone Mineral Density in Postmenopausal Women

          閉経女性における骨折と骨密度に対する副甲状腺ホルモン(1 - 34)の効果

          副甲状腺ホルモンの 1 日 1 回投与により,骨形成と骨吸収が増大するが,骨折のリスクに対するこの治療の効果は明らかでない.この研究では,骨粗鬆症の閉経女性が,20 μg または 40 μg の副甲状腺ホルモン(1-34),あるいはプラセボの皮下投与を,平均約 18 ヵ月間毎日受けた.プラセボと比べ,副甲状腺ホルモンは,どちらの用量でも,腰椎と大腿骨頸部の骨密度を有意に上昇させ,骨折のリスクを有意に低下させた.副作用はほとんどなかった.
          自然に発症する副甲状腺機能亢進症では,副甲状腺ホルモンの分泌が持続的に亢進しており,骨吸収が促進されるため,骨粗鬆症が生ずる.これに対して,副甲状腺ホルモンの 1 日 1 回投与により生ずる間歇的な副甲状腺機能亢進症では,骨吸収以上に骨形成が促進されるため,骨密度が増加する.この研究では,骨密度の増加に伴い,脊椎や他部位の骨折が減少した.

          • 心カテーテル検査の実施における人種差
            Racial Differences in the Use of Cardiac Catheterization

            冠動脈疾患の黒人患者では,白人患者と比べ,冠手技が行われる傾向が低く,その説明として,人種偏見が唱えられてきた.心筋梗塞後に入院したメディケア受給者の大規模な集団を対象とするこの研究では,黒人患者に対する心カテーテル検査の実施率は,白人患者より低かった.しかし,黒人患者の診療を行ったのが白人医師の場合でも黒人医師の場合でも,この結果は同様であった.
            黒人患者における心カテーテル検査の実施率がより低いことに対する説明として,明白な人種偏見以外の要因がある可能性を今回の知見は示唆している.こうした診療パターンは,医師の人種とは独立に認められ,生存率に対する影響はなかった.

            • 医療の進歩:特発性脳内出血
              Medical Progress: Spontaneous Intracerebral Hemorrhage

              医療の進歩:特発性脳内出血

              脳内出血は,脳卒中の 10~15%を占める.一次出血は,高血圧やアミロイド性血管障害で損傷を受けた小血管の破裂により生ずる.二次出血は,血管奇形,動脈瘤,腫瘍から生ずるか,凝固系障害が原因となる場合もある.この総説では,重篤で生命を脅かすことも多いが,予防の可能性もあるこの疾患の,重要な臨床的特徴を概括している.