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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

May 17, 2001
Vol. 344 No. 20

This Week in the JOURNAL

ORIGINAL ARTICLES

  • 汚染したエポエチンアルファによる血液透析センターでのセラチア感染症
    Serratia Infections at a Hemodialysis Center Due to Contaminated Epoetin Alfa

    血液透析センターで,1 ヵ月のあいだに 10 件の Serratia liquefaciens 菌血症が発生した.症例対照研究により,エポエチンアルファの高用量投与と感染症との関連が示された.透析手順の再調査から,防腐剤が含まれていないエポエチンアルファの残液をプールして投与するために,使い切りバイアルに複数回にわたり注射針を刺していたことが明らかになった.プールされたエポエチンアルファから,病原体が分離された.

    血液透析施設は,費用節減の圧力下にあり,高価な医薬品の無駄を避けることでかなりの節約が可能になる.今回の深刻な集団感染は,使い切りバイアルに残ったエポエチンアルファをプールしてその後使用したことに由来する,外因性の汚染が原因であった.透析室では,臨床的必要にもっとも見合った用量の薬剤バイアルを使用すべきである.

  • 心臓移植の小児における移植心の廃絶とウイルスゲノムとの関連
    Association of Viral Genome with Graft Loss in Children with Cardiac Transplants

    心臓移植の小児における移植心の廃絶とウイルスゲノムとの関連

    心臓移植患者の生存は,移植心の拒絶と冠動脈血管障害が制限となる.心臓移植を受けた小児を対象とするこの研究では,心筋生検検体をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で検査し,ウイルス感染の有無を検討した.ウイルスゲノム,とりわけアデノウイルスの存在は,拒絶や冠動脈血管障害によるその後の移植心の廃絶を予測するものであった.

    この研究の知見は,心臓のウイルス感染を,移植心の廃絶に陥らせる可能性のある事象として示しているので重要である.心臓ウイルス感染の予防と治療を,移植心保持のアプローチとして研究すべきであることを今回の観察は示唆している.

  • アフリカへの旅行者における Rickettsia africae 感染症
    Rickettsia africae Infections in Travelers to Africa

    アフリカへの旅行者における Rickettsia africae 感染症

    サハラ砂漠以南のアフリカ諸国への旅行後に病気になり,アフリカダニ咬傷熱と診断された 100 例を超える患者のうち,ほぼ全例に Rickettsia africae 感染の検査所見を認めた.6 例を除く全例にダニ咬傷性瘢痕があり,半数近くに発疹があった.発熱は軽度であり,患者全例が回復した.デオキシサイクリンが感染に奏効した.

    R. africae は蓄牛や猟鳥獣類に寄生するマダニが媒介し,感染症の有病率はサハラ砂漠以南のアフリカ諸国で高い.今回の研究者らは,特異度の高い 3 種類の検査法を用いて,帰国旅行者における R. africae 感染を確認した.これらの検査は,こうした軽度の感染症と,より重篤な他のリケッチア感染症を鑑別する手助けとなりうる.このマダニ媒介疾患は,国際的な重要性がある.

  • 短報:組織工学で作った骨を用いた剥離指節骨の置換
    Replacement of an Avulsed Phalanx with Tissue-Engineered Bone

    組織工学で作った骨を用いた剥離指節骨の置換

    この報告は,母指遠位指節骨が剥離した男性に対する,組織工学で形成した骨の移植について記述している.移植骨は,指節骨様のサンゴ骨格に,in vitro で増殖した同種骨膜細胞を注入したものであった.術後における,患者の母指の機能と強度は良好であった.経時的な X 線検査では,骨様構造の形成が示され,術後 10 ヵ月の生検では,骨様構造の 30%がサンゴ,5%が骨,65%が軟部組織からなることが示された.

    小骨の置換方法として,同種骨細胞と不活性の骨格形成素材の同時使用は,同種移植片や不活性素材の単独使用よりも優れている.患者由来の細胞が利用され,骨格素材は最終的に吸収される.手法が完全に近づけば,この種の手技の利用が増加することに疑問の余地はない.いずれは,容易に入手できる幹細胞が利用されるようになり,骨細胞はおそらく必要なくなるであろう.

SPECIAL ARTICLE

  • Shattuck 講演 ― 神経変性疾患とプリオン
    Shattuck Lecture ― Neurodegenerative Diseases and Prions

    Shattuck 講演 ― 神経変性疾患とプリオン

    2000 年の Shattuck 講演は,Stanley B. Prusiner 博士により行われた.博士は,全体が蛋白質からなる新種の感染病原体であるプリオンの発見により,1997 年にノーベル賞を授賞した.プリオンは,細胞遺伝子の変異により生成し,正常のプリオン蛋白(PrP)が感染形質に変換することで複製される.プリオンは,クロイツフェルト–ヤコブ病やウシ海綿状脳症(「狂牛病」)の原因となる.この講演では,これらの疾患の研究から得られた教訓に基づき,感染性プリオン疾患,アルツハイマー病,パーキンソン病,その他の変性脳疾患を統一する概念が示されている.

MEDICAL PROGRESS

  • 経口避妊薬と静脈血栓症のリスク
    Oral Contraceptives and the Risk of Venous Thrombosis

    経口避妊薬と静脈血栓症の関連が認識されたことで,エストロゲン含量がより少ない避妊薬が開発された.この総説は,現在使用されている経口避妊薬と静脈血栓症との関連の程度を明らかにし,第三世代プロゲスチンを含有する調剤で認められるリスク上昇に焦点を当てている.著者らは,経口避妊薬関連の静脈血栓症リスクに対する,プロトロンビン遺伝子変異の影響を議論すると同時に,リスク上昇の基礎にあるメカニズムを考察している.本稿はまた,経口避妊薬を処方する医師に対する実践的な助言を行っている.