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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

October 25, 2001
Vol. 345 No. 17

  • 重症熱傷後の β 遮断による異化作用の逆転
    Reversal of Catabolism by Beta-Blockade after Severe Burns

    重症熱傷の患者には,筋肉蛋白質の顕著な異化作用を含む,カテコールアミン介在性の代謝亢進が生じ,回復に悪影響を及ぼす.前向き無作為割付け臨床試験において,重症熱傷の小児 13 例に,最長 4 週間の経口プロプラノロールを投与し,こうした反応の抑制を試みた.12 例を対照群とした.β 遮断により,安静時エネルギー消費が低下し,筋肉蛋白質平衡が 82%上昇した.これに対して対照群では,筋肉蛋白質平衡が 27%低下した.
    熱傷による入院時にプロプラノロールを長期間投与すると,代謝亢進が抑制され,筋肉蛋白質の異化作用が逆転する.この効果により,全般的な治癒が促進される可能性がある.

    • 急性心筋梗塞の高齢患者における輸血
      Blood Transfusion in Elderly Patients with Acute Myocardial Infarction

      冠動脈疾患の患者において,貧血が有害な可能性がある.この観察研究では,高齢の急性心筋梗塞患者に関する多数例のデータを分析し,入院時のヘマトクリット値が 30%以下の場合には,輸血が有用であることを見出した.ヘマトクリット値が 33%を超える患者では,輸血の有用性はなく,むしろ有害な可能性があった.
      今回のデータは,高齢の急性心筋梗塞患者に対して,ヘマトクリット値が 30%以下の場合に,輸血の実施を支持するものである.このデータは,臨床試験から得られたものではないが,診療形態を変化させるに足る強固なものである.

      • 輸送されて移植された死体腎の同種移植片と地元で移植された死体腎の同種移植片の生着についての比較
        Comparison of the Survival of Shipped and Locally Transplanted Cadaveric Renal Allografts

        輸送されて移植された死体腎の同種移植片と地元で移植された死体腎の同種移植片の生着についての比較

        この研究は,死体腎の同種移植片の一地域から他の地域への輸送が,移植腎の生着に及ぼす影響を検討した.輸送に関連して,同種移植片の機能不全の発生率が,全般的に上昇した.HLA 不一致を補正した,移植後 1 年間の機能不全のリスクは,現地で移植した類似の腎臓よりも,輸送した腎臓が 17%高かった.
        死体腎同種移植片の配分戦略は,移植臓器の輸送に伴う生着不全リスクの上昇を考慮すべきである.HLA 不一致が多い移植臓器では,とりわけそうした考慮が必要である.

        • 脳虚血性発作後のエストロゲン補充療法
          Estrogen Replacement after Ischemic Stroke

          脳虚血性発作後のエストロゲン補充療法

          エストロゲン補充療法を受けている女性は,脳卒中や死亡のリスクが他の女性よりも低いことが一部の観察研究で示唆されている.「脳卒中に対する女性のエストロゲン臨床試験」は,脳血管障害の発症後間もない 664 名の女性を対象とする,エストラジオール-17β の二重盲検,プラセボ対照臨床試験である.エストロゲン治療は,これらの女性における脳卒中や死亡のリスクを下げず,致死的な脳卒中のリスクの上昇とボーダーラインの有意差で関連し,子宮内膜の有害作用とも関連していた.
          エストロゲン補充療法の脳血管に対する有用性の確認に失敗する無作為割付け臨床試験のデータが増加しているが,この研究はこうした知見をさらに追加するものである.脳血管疾患の二次予防のために,エストロゲンを処方すべきではない.

          • ある腎臓移植レシピエントにみられたBK 関連ポリオーマウイルス血管症
            BK-Related Polyomavirus Vasculopathy in a Renal-Transplant Recipient

            ある腎臓移植レシピエントにみられた BK 関連ポリオーマウイルス血管症

            ヒトポリオーマウイルスには,進行性多病巣性白質脳症を起すことのある JC ウイルスと,腎臓移植レシピエントに重症の同種移植片機能不全を生じさせることのある BK ウイルスがある.この症例報告は,血管親和を伴う播種性の BK ウィルス感染が生じ,全身性の血管症,毛細血管漏出症候群で死亡にいたった腎臓移植レシピエントについて記述している.
            慎重な検討が行われた今回の症例において,BK ポリオーマウイルスの全身感染と関連する新たな臨床症候群が記述されている.このウイルスは,血管内膜に対する特異な親和性があり,広範な血管内膜感染が生じた.血管内膜感染は,心臓と骨格筋でとりわけ顕著であった.

            • 臨床診療:軽症喘息
              Clinical Practice: Mild Asthma

              臨床診療:軽症喘息

              8 年間の喘息の既往がある 26 歳男性に,週 3 回程度の息切れと咳がある.患者は,運動によってつねに喘鳴を生ずるが,夜間の喘息に悩まされることは通常ない.外来での呼吸機能検査では,患者の 1 秒量は 85%であった.治療はどのように行うべきだろうか?