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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

July 19, 2001
Vol. 345 No. 3

ORIGINAL ARTICLE

  • BRCA 突然変異を伴う女性における予防的両側乳房切除術後の乳癌
    Breast Cancer after Prophylactic Bilateral Mastectomy in Women with a BRCA Mutation

    <i>BRCA</i> 突然変異を伴う女性における予防的両側乳房切除術後の乳癌

    BRCA1BRCA2 遺伝子の突然変異を保因する女性は,乳癌感受性が非常に高い.この研究は,こうした女性 139 例における乳癌の発症を評価した.女性は,予防的両側乳房切除術か,定期的なサーベイランスのいずれかを選択した.3 年間の追跡調査後において,監視群では 63 例中 8 例が乳癌を発症したが,予防的乳房切除術を行った女性では 76 例中だれも発症しなかった.
    今回の前向き研究は,BRCA1BRCA2 という乳癌感受性遺伝子を保有する女性における,予防的乳房切除術に対する支持を強化するものである.追跡調査の期間が比較的短い点がこの研究の限界である.短期的にはこの手技は非常に効果的であるが,後年,残存乳房組織から癌が発生するか否かは明らかでない.この欠点にもかかわらず,今回の研究は,乳癌のリスクが高い女性を診察する臨床医に対して有用な情報を提供している.

  • 特発性深部静脈血栓症に対する 3 ヵ月間と 1 年間の経口抗凝固薬療法の比較
    Three Months versus One Year of Oral Anticoagulant Therapy for Idiopathic Deep Venous Thrombosis

    特発性深部静脈血栓症に対する 3 ヵ月間と 1 年間の経口抗凝固薬療法の比較

    特発性深部静脈血栓症の初回エピソードに対する,経口抗凝固薬の最適な治療期間は明らかではない.この研究では,患者を無作為に割付けて,経口抗凝固薬治療を 3 ヵ月間または 1 年間行った.12 ヵ月後の時点では,経口抗凝固薬の治療を継続した群のほうが,深部静脈血栓症の再発率が低かった.しかし,24 ヵ月後の追跡調査では,2 群の再発率に違いはなかった.
    原因不明の深部静脈血栓症患者において,経口抗凝固薬治療を 12 ヵ月まで延長するのは有益である.しかしこの利益は,治療の中止後には消失してしまう.経口抗凝固薬治療を無期限に継続すれば,臨床的利益も延長する可能性があるが,出血性合併症のリスクも持続することになるだろう.

  • 多剤耐性結核の治療
    Treatment of Multidrug-Resistant Tuberculosis

    イスタンブールの専門病院で,1992~99 年に,158 例の患者が多剤耐性結核の治療を受けた.患者全例が,イソニアジドとリファンピン双方に対する耐性を示し,患者の 40%が進行性疾患であった.投与した薬剤は平均 5.5 剤であり,36 例に外科手術が行われた.全体的な成功率は 77%であり,78 例が治癒し,43 例がおそらく治癒していた.
    この研究は,集中的治療と長期間の入院により,多剤耐性結核の患者の大半が治癒しうることを示している.しかし,多剤耐性結核の多くは,結核の初期治療が不適切で管理不十分な結果として生じるものである.

BRIEF REPORT

  • アクアポリン-1 の完全欠損による尿濃縮能の異常
    Defective Urinary Concentrating Ability Due to a Complete Deficiency of Aquaporin-1

    アクアポリン-1 の完全欠損による尿濃縮能の異常

    アクアポリン-1 は,赤血球膜(Colton 血液型抗原と関連),近位尿細管上皮,他の腎構造に発現する水チャンネル蛋白である.Colton 血液型抗原の欠損患者は,アクアポリン-1 遺伝子の突然変異がホモ接合であり,蛋白の産生が障害されている.アクアポリン-1 の完全欠損を伴う女性 2 例において,水分欠乏時に尿を最大限に濃縮する能力の障害が認められた.
    この生殖細胞系突然変異の作用は,アクアポリン-1 が,水分欠乏時における尿濃縮に役割を果していることを示している.

SPECIAL ARTICLE

  • 肺癌切除後の生存に及ぼす病院の規模の影響
    The Influence of Hospital Volume on Survival after Resection for Lung Cancer

    肺癌の外科切除を施行した高齢患者を対象とするこの研究では,そうした手術の実施件数が多い病院で手術が行われた場合に,良好な転帰となる確率がもっとも高かった.肺癌手術後の 5 年生存率は,実施件数が最多の病院では 44%であったのに対して,実施件数が最少の病院で手術が行われた場合は 33%であった.
    癌の外科手術の転帰は,多くの手術を行っている病院のほうが,往々にして優れていることが知られている.しかし,肺癌については,手術件数と転帰の関連は明らかでなかった.この研究は,肺癌の手術成績が,毎年多数の手術を行っている病院でもっともよいことを示している.

REVIEW ARTICLE

  • 医学の進歩:米国における結核の管理
    Medical Progress: Management of Tuberculosis in the United States

    医学の進歩:米国における結核の管理

    1980 年代末から 1990 年代初頭に結核が再興したにもかかわらず,この公衆衛生問題に新たな関心が集まったことにより,米国における結核の罹患率は,全期間を通して最低となっている.現在は,結核を制圧ないし消滅させる好機である.この総説は,結核の疫学的特性,症例の診断,活動性および不顕性感染の治療,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者や薬剤耐性結核菌感染患者などの特殊な状況に焦点を当てて解説している.