オランダでの精神科医療における医師幇助死
PHYSICIAN-ASSISTED DEATH IN PSYCHIATRIC PRACTICE IN THE NETHERLANDS
J.H. GROENEWOUD AND OTHERS
1994 年,オランダ最高裁は,耐えがたい精神的苦痛を有するが身体疾患のない患者に対する医師幇助自殺は,例外的に合法となりうると裁定した.われわれは,オランダの精神科医療における医師幇助自殺と安楽死について調査した.
1996 年に,オランダの精神科医 673 人 ― オランダの精神科専門医の約半数 ― に質問票を送付し,研究基準に合致した 667 人から 552 通の回答を得た(回答率,83%).精神科医による医師幇助自殺が要請された頻度と,幇助の実例の年間の頻度を推定した.
回答者のうち,205 人(37%)が,明確かつ持続的な医師幇助自殺の要請を少なくとも 1 回受け,12 人がこれに応じていた.精神科診療では,年間 320 件の要請があり,2~5 件の幇助自殺があると推定された.幇助したことのある医師を除外すると,345 人(64%)が,精神障害を理由とする医師幇助自殺は容認できると考えており,このうち 241 人はすすんで幇助しようと思える例を思いつくことができると述べた.拒否した理由でもっとも多かったのは,患者は治療可能な精神疾患であると考えていたため,自殺幇助には原則的に反対であったため,苦痛が耐えがたい・望みがないということに疑問があったため,であった.精神科医による自殺幇助を受けた患者は,全例ではないが大部分が精神疾患と重篤な身体疾患の両方を有し,身体疾患の多くは末期であった.
回答者の 30%は,他科の医師から少なくとも 1 回,患者からの幇助死の要請に関してコンサルトされたことあった.そのようなコンサルトの年間件数は 310 件と推定され,医療現場における安楽死または医師幇助自殺の推定要請件数 9,700 件の約 3%であった.
医師幇助自殺の明確な要請は,オランダの精神科診療における頻度は低くないが,これらの要請が認められるのはまれである.医師幇助自殺を要請する内科患者の精神科へのコンサルトは比較的まれである.