The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

March 6, 1997 Vol. 336 No. 10

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

閉経後女性のフィブリン溶解(線溶)に及ぼすホルモン補充療法の効果
EFFECTS OF HORMONE-REPLACEMENT THERAPY ON FIBRINOLYSIS IN POSTMENOPAUSAL WOMEN

K.K. KOH AND OTHERS

背景

ヒトにおける線溶現象の重要な阻害剤である 1 型プラスミノーゲン活性化因子阻害薬(PAI-1)の血漿中濃度は,閉経後増加し,このことは,心血管疾患のリスクに関与する可能性がある.われわれは,PAI-1 濃度に及ぼすホルモン補充療法の効果を検討した.

方 法

無作為交叉試験において,閉経後女性 30 人に抱合エストロゲン(0.625 mg/日)を経口的に,また閉経後女性 20 人にエストラジオール(0.1 mg/日)を経皮的に,単独または酢酸メドロキシプロゲステロン(2.5 mg 連日)と併用して 1 ヵ月間投与して,血漿中 PAI-1 抗原濃度に及ぼすそれらの効果を検討した.線溶現象の指標として,血清中のクロスリンクしたフィブリン分解産物(D-ダイマー)を測定した.

結 果

PAI-1 濃度は,ベースラインにおいて D-ダイマー濃度と逆相関した(r=-0.540,p=0.002).抱合エストロゲンは,単独でも,酢酸メドロキシプロゲステロンとの併用の場合でも,PAI-1 の平均(±SD)血漿中濃度はそれぞれ,32±34 ng/mL から 14±10 ng/mL(p<0.001),そして 31±29 ng/mL から 15±11 ng/mL(p=0.003)へと減少した;治療前の PAI-1 濃度と治療中のこれら濃度の減少の度合いとのあいだには有意な逆相関を認めた(抱合エストロゲンに関して r=-0.631,p<0.001;併用療法に関して r=-0.507,p=0.004).PAI-1 濃度の減少の度合いは,抱合エストロゲンを単独で投与した場合でも(r=-0.572,p=0.001),併用ホルモン療法を行った場合でも(r=-0.541,p=0.002),D-ダイマー濃度の増加と関連があった.エストラジオールの経皮投与では,PAI-1 濃度はベースライン値に対して有意な変化を示さなかった.

結 論

抱合エストロゲンは,単独で用いてもプロゲスチン療法と併用しても,閉経後女性の PAI-1 濃度を約 50%減少させ,全身的な線溶現象の増強に関連した.これらの知見により,冠動脈疾患に対するホルモン補充療法の予防効果を部分的に説明できるかも知れない.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1997; 336 : 683 - 90. )