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January 9, 1997 Vol. 336 No. 2

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冠動脈血管形成術または冠動脈バイパス術に無作為化後の医療費と QOL
MEDICAL CARE COSTS AND QUALITY OF LIFE AFTER RANDOMIZATION TO CORONARY ANGIOPLASTY OR CORONARY BYPASS SURGERY

M.A. HLATKY AND OTHERS

背景

多枝冠動脈疾患患者において冠動脈血管形成術とバイパス手術とを比較する無作為臨床試験では,死亡と心筋梗塞の総発生率に有意差は示されていない.われわれは,血管形成術で治療した患者とバイパス手術で治療した患者とで,5 年の追跡期間における QOL,就労状況,医療費を比較した.

方 法

無作為化試験である「バイパス術または血管形成術による血行再建に関する試験(BARI 試験)」に登録された患者 1,829 人中 934 人がこの試験に参加した.QOL に関する詳細なデータを毎年収集し,経済的データを四半期ごとに収集した.

結 果

最初の 3 年の追跡期間に,一般的な日常生活動作の能力を測定する Duke 活動状態指数(DASI)の機能状態スコアは,バイパス手術群に割り付けられた患者のほうが,血管形成術に割り付けられた患者よりも改善した(p<0.05).QOL のその他の指標は,追跡期間中両群で同程度に改善した.血管形成術群の患者はバイパス手術群の患者より 5 週間早く職場に復帰した(p<0.001).血管形成術の平均初期費用はバイパス手術の 65%であったが(21,113 ドル 対 32,347 ドル,p<0.001),5 年後,血管形成術の総医療費はバイパス手術の 95%となり(56,225 ドル 対 58,889 ドル),差は 2,664 ドルであった(p=0.047).血管形成術の 5 年間の医療費は,2 枝病変患者では,バイパス手術よりも有意に低かったが(52,930 ドル 対 58,498 ドル,p<0.05),3 枝病変患者では差を認めなかった(60,918 ドル 対 59,430 ドル).5 年間の追跡後,バイパス手術の総費用効率は延命 1 年あたり 26,117 ドルであったが,延命 1 年あたり 10 万ドル以上という受け入れがたい費用効率を除外することはできなかった(p=0.13).糖尿病患者ではバイパス手術により生存が有意に改善したため,バイパス手術は,糖尿病患者の治療ではとくに費用効率が高いと思われた.

結 論

多枝冠動脈疾患患者では,冠動脈バイパス術のほうが,術後はその手技により病的状態となるものの,3 年間の QOL が冠動脈血管形成術よりも良好であることと関連している.冠動脈血管形成術は,2 枝冠動脈疾患患者に限り,5 年間の医療費がバイパス手術よりも低い.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1997; 336 : 92 - 9. )