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July 17, 1997 Vol. 337 No. 3

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抗リン脂質抗体症候群における流産 ― 可能性のある血栓形成機序
PREGNANCY LOSS IN THE ANTIPHOSPHOLIPID-ANTIBODY SYNDROME - A POSSIBLE THROMBOGENIC MECHANISM

J.H. RAND AND OTHERS

背景

抗リン脂質抗体症候群における血管血栓症と流産の機序は不明である.強力な抗凝固活性を有するリン脂質結合蛋白であるアネキシン V 濃度は,この症候群の女性の胎盤絨毛では著しく減少している.したがって,そのような女性における凝固亢進は,抗リン脂質抗体による表面結合アネキシン V の減少によって起る可能性がある.この考えを検討するために,われわれは,抗リン脂質抗体が培養トロホブラストおよびヒト臍帯静脈内皮細胞のアネキシン V 量にどのように影響を及ぼすか,そして,これらの細胞の凝固促進活性にどのように影響を及ぼすかを調べた.

方 法

抗リン脂質抗体症候群患者 3 人および健常対照者から IgG 分画を単離した.これらの抗体を,培養 BeWo 細胞 (胎盤トロホブラスト細胞株),初代培養トロホブラスト,そしてヒト臍帯静脈内皮細胞とともにインキュベートした.酵素結合イムノソルベントアッセイによって,細胞表面上のアネキシン V を測定した.細胞上の血漿の凝固時間も求めた.

結 果

抗リン脂質抗体 IgG に曝露したトロホブラストと内皮細胞は,対照 IgG の場合と比較して,アネキシン V 量が減少していた(トロホブラスト,0.37±0.02 ng/well 対 0.85±0.12 ng/well,p=0.02;内皮細胞,1.6±0.04 ng/well 対 2.1±0.05 ng/well,p=0.001).同様に,抗リン脂質抗体 IgG に曝露したトロホブラストと内皮細胞は,対照 IgG に曝露した細胞より平均(±SE)血漿凝固時間が短かった(8.7±2.0 分 対 21.3±2.9 分,p=0.02;内皮細胞,9.8±0.8 分 対 14.2±1.2 分,p=0.04).

結 論

抗リン脂質抗体は,培養トロホブラストと内皮細胞上のアネキシン V 量を減少させ,血漿の凝固を促進する.血管細胞上のアネキシン V 濃度の減少は,抗リン脂質抗体症候群における血栓形成と流産の重要な機序である可能性がある.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1997; 337 : 154 - 60. )