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July 31, 1997 Vol. 337 No. 5

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ヒト免疫不全ウイルス感染患者と非感染患者における初期梅毒の強化療法に関する無作為臨床試験
A RANDOMIZED TRIAL OF ENHANCED THERAPY FOR EARLY SYPHILIS IN PATIENTS WITH AND WITHOUT HUMAN IMMUNODEFICIENCY VIRUS INFECTION

R.T. ROLFS AND OTHERS

背景

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者において神経梅毒と梅毒トレポネーマによる脳脊髄液の侵襲確認報告により,初期梅毒に対して推奨されているペニシリン G ベンザチン療法の適切性に疑問が生じた.

方 法

多施設無作為二重盲検臨床試験において,われわれは,初期梅毒に対する二つの治療を評価した:ペニシリン G ベンザチン 240 万単位による治療と,この治療にアモキシシリンとプロベネシドの 10 日間投与を加えた強化療法.HIV 感染患者および非感染患者の血清反応および臨床反応を 1 年のあいだ追跡調査した.

結 果

1991~94 年のあいだに,患者 541 人を登録し,この中には HIV 感染症であるがその臨床症状は非感染者とほとんど変らない患者 101 人(19%)が含まれた.下疳および皮疹の寛解率は,治療の割付けまたは HIV 状態によって有意差はなかった.HIV 感染患者では,血清学的に定義した治療失敗をより多く認めた.臨床症状により定義した治療失敗は,HIV 感染患者に 1 名認められた.血清学的に定義した治療失敗率の治療群による差はなかった(通常の療法で 6 ヵ月目に 18%;強化療法では 17%).登録時に梅毒トレポネーマが脳脊髄液中に認められたのは,患者 131 人中 32 人(24%),および治療後では調べた患者 35 人中 7 人であった.臨床的に明らかな神経梅毒患者はなく,梅毒トレポネーマの検出率は HIV 状態によって差がなかった.

結 論

原発性または続発性梅毒の治療後,HIV 感染患者は HIV 非感染患者より血清学的反応が不良であったが,臨床的に定義した失敗は両群ともまれであった.アモキシシリンとプロベネシドによる強化治療は,転帰を改善しなかった.梅毒トレポネーマは,治療前では調べた患者の四分の一の脳脊髄液中に検出されたが,そのような知見は治療失敗を予測しなかった.初期梅毒の治療で現在,推奨されているものは,HIV 感染の有無によらず,ほとんどの患者にとって適切であるように思われる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1997; 337 : 307 - 14. )