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May 6, 1999 Vol. 340 No. 18

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クローン病患者における瘻孔治療のためのインフリキシマブ
Infliximab for the Treatment of Fistulas in Patients with Crohn's Disease

D.H. PRESENT AND OTHERS

背景

腸皮瘻はクローン病の重篤な合併症であり,その治療は困難である.インフリキシマブ(infliximab)は,モノクローナル抗体と腫瘍壊死因子α(TNF-α)のキメラ蛋白であるが,最近,クローン病の治療薬として開発された.そこで,われわれは,クローン病患者の瘻孔の治療を目的として,インフリキシマブの多施設共同の無作為二重盲検プラセボ対照比較試験を実施した.

方 法

本試験には,クローン病の合併症として,少なくとも 3 ヵ月の期間にわたって排液の認められる腹部または肛門周囲の瘻孔を有していた 94 例の成人患者が組み入れられた.これらの患者を,次の三つの治療のうちの一つに無作為に割り付けた:プラセボ(31 例),体重当り 5 mg/kg のインフリキシマブ(31 例),または 10 mg/kg のインフリキシマブ(32 例);これらの三つの治療は,すべて,試験 0 週目,2 週目および 6 週目に静脈内投与するよう計画されていた.主要エンドポイントは,試験来院時に観察した排液性の瘻孔の個数が,2 回以上連続した来院時に,試験開始時から 50%以上減少していることであった.副次エンドポイントは,すべての瘻孔が閉鎖することであった.

結 果

主要エンドポイントに達した患者は,プラセボ群の患者では 26%であったのに対して,インフリキシマブの 5 mg/kg の投与を受けた患者では 68%,10 mg/kgの投与を受けた患者では 56%であった(それぞれ p = 0.002,p = 0.02).さらに,すべての瘻孔が閉鎖した患者は,プラセボ群に割り付けられた患者では 13%であったのに対して,インフリキシマブの 5 mg/kg 投与に割り付けられた患者では 55%,10 mg/kg 投与に割り付けられた患者では 38%であった(それぞれ,p = 0.001,p = 0.04).瘻孔が閉鎖したままの状態で維持できた期間は,中央値で 3 ヵ月間であった.有害事象は,すべての治療群で 60%を超える患者に発現した.インフリキシマブの治療を受けた患者では,その主なものは,頭痛,膿瘍,上気道感染症,および倦怠感であった.

結 論

インフリキシマブは,クローン病患者の瘻孔の一つの有効な治療法である.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 340 : 1398 - 405. )