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February 11, 1999 Vol. 340 No. 6

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甲状腺機能低下症患者におけるチロキシンとトリヨードチロニンの併用と比較したチロキシンの効果
EFFECTS OF THYROXINE AS COMPARED WITH THYROXINE PLUS TRIIODOTHYRONINE IN PATIENTS WITH HYPOTHYROIDISM

R. BUNEVIČIUS, G. KAŽANAVIČIUS, R.ŽALINKEVIČIUS, AND A.J. PRANGE, JR.

背景

甲状腺機能低下症の患者には,一般にチロキシン(レボチロキシン)の単剤による治療が行われているが,正常な甲状腺からはチロキシンとトリヨードチロニンの両方が分泌されている.甲状腺からのトリヨードチロニンの分泌が生理学的に重要なのかどうかについては不明である.

方 法

甲状腺機能低下の患者 33 例について,チロキシン単剤の効果とチロキシンとトリヨードチロニン(リオチロニン)の併用の効果を比較した.各患者に対して,二つの 5 週間治療試験を実施した.一方の治療期間には,患者が通常服薬している用量のチロキシンが投与された.もう一方の治療期間には,チロキシンの通常用量である 50 μg をトリヨードチロニンの 12.5 μg に置き換えたレジメンが行われた.各患者が二つの治療を受ける順序は無作為化されていた.生化学,生理学,および心理学の検査を各治療期間の終了時に実施した.

結 果

チロキシン単剤治療後よりもチロキシンとトリヨードチロニンの併用治療後において,患者の血清中の遊離チロキシン濃度および総チロキシン濃度は低く,血清中の総トリヨードチロニン濃度は高かった.その一方で,血清中の甲状腺刺激ホルモンの濃度は 二つの治療後で同程度であった.認知検査と気分の評価に関する 17 のスコア中の 6 スコアが,チロキシンとトリヨードチロニンの併用治療後に改善あるいは正常近くにまで回復していた.同様に,気分と身体状態を表すのに用いた 15 の視覚アナログスケールについても,その中の 10 スケールの検査結果がチロキシンとトリヨードチロニンの併用治療後に有意に改善していた.心拍数と血清性ホルモン結合グロブリン濃度は,チロキシンとトリヨードチロニンの併用治療後に有意に高かったが,血圧,血清脂質濃度,および神経生理学検査の結果は,二つの治療後で同程度であった.

結 論

甲状腺機能低下症の患者においては,チロキシンの投与量の一部をトリヨードチロニンに置き換えると,気分および神経心理学的機能が改善する可能性がある;この試験結果は,甲状腺から正常に分泌されているトリヨードチロニンの特異的作用を示唆するものである.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 340 : 424 - 9. )