The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

March 4, 1999 Vol. 340 No. 9

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

糖尿病と収縮期高血圧症を合併した高齢患者におけるカルシウムチャネル遮断の効果
Effects of Calcium-Channel Blockade in Older Patients with Diabetes and Systolic Hypertension

J. TUOMILEHTO AND OTHERS

背景

近年,糖尿病と高血圧症を合併している患者には,カルシウム拮抗薬が有害であるかもしれないということが報告されている.われわれは,以前に,カルシウム拮抗薬のニトレンジピンによる降圧治療が心血管系イベントのリスクを低下させることを報告した.今回のポストホック解析では,糖尿病患者と非糖尿病患者におけるニトレンジピン治療の転帰を比較した.

方 法

施設,性別,および心血管系合併症の既往の有無による層別を行ってから,収縮期血圧が 160~219 mmHg かつ拡張期血圧が 95 mmHg 未満の 4,695 例の患者(年齢,≧60 歳)を,実薬治療またはプラセボに無作為に割り付けた.実薬治療は,エナラプリル(5~20 mg/日)かヒドロクロロチアジド(12.5~25 mg/日),あるいはその両薬剤を併用または代用できるニトレンジピン(10~40 mg/日)治療で,収縮期血圧が最低 20 mmHg 低下し,かつ 150 mmHg 未満になるまで増量できるというものであった.対照群には,マッチングさせたプラセボの錠剤を同様の方法で投与した.

結 果

無作為化の時点で,492 例(10.5%)の患者が糖尿病であった.追跡調査期間の中央値であった 2 年間が経過した後のプラセボ群と実薬治療群における収縮期および拡張期血圧の差は,糖尿病患者では,それぞれ 8.6 mmHg および 3.9 mmHg であった.非糖尿病患者の 4,203 例では,2 群間の収縮期および拡張期血圧の差は,それぞれ 10.3 mmHg および 4.5 mmHg であった.考えられる交絡因子で補正すると,糖尿病患者の群では,実薬治療によって,全死亡率が 55%(死亡例数では,患者 1,000 例当り 45.1 例から 26.4 例に減少),心血管系疾患による死亡率が 76%,すべての心血管系イベントの合計が 69%,致死的および非致死的な発作が 73%,およびすべての心臓イベントの合計が 63%低下していた.非糖尿病の患者では,実薬治療によって,すべての心血管系イベントの合計が 26%,致死的および非致死的な発作が 38%低下した.実薬治療を受けた患者群でみると,全死亡率,心血管系疾患による死亡率,およびすべての心血管系イベントの合計の低下は,非糖尿病患者よりも糖尿病患者で有意に大きかった(それぞれ p=0.04,p=0.02,および p=0.01).

結 論

ニトレンジピンを基本とした降圧療法は,糖尿病と収縮期高血圧症を合併している高齢者の患者でとくに有益である.したがって,今回の試験結果は,長時間作用性カルシウム拮抗薬の投与が糖尿病患者には有害であるかもしれないという仮説を支持するものではない.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 340 : 677 - 84. )