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October 28, 1999 Vol. 341 No. 18

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身体症状とうつ病との関係に関する国際的研究
An International Study of the Relation between Somatic Symptoms and Depression

G.E. SIMON, M. VONKORFF, M. PICCINELLI, C. FULLERTON, AND J. ORMEL

背景

うつ病の患者,とりわけプライマリケアの医師の診察を受けたうつ病患者は,頭痛,便秘,脱力感あるいは背痛のような身体症状を訴えることがある.いくつかの先行研究において,西洋諸国の患者よりも,非西洋諸国の患者が身体症状を訴えやすいようであるということが示唆されている.

方 法

身体症状とうつ病との関係を検討するために,世界保健機関(WHO)によって実施された一般保健医療における精神的問題に関する研究のデータを利用した.この研究は,1991 年および 92 年に実施され,5 大陸,14 ヵ国のプライマリケアの医療施設 15 施設において 25,916 例の患者にスクリーニングが行われた.そして,合計で 5,447 例の患者に対して,抑うつ性および身体的障害に関する体系化された評価が行われた.

結 果

全体では,1,146 例の患者(加重有病率,10.1%)がうつ病の主要な基準を満たしていた.身体症状のみの訴えであったうつ病患者の割合は 45~95%であった(全体の有病率,69%;施設間の比較では p=0.002).ほとんどの患者がかかりつけの医師をもっている施設よりも,患者がプライマリケアの医師と継続した信頼関係を築き上げられていない施設で,身体症状の訴えがより多くみられた(オッズ比,1.8;95%信頼区間,1.2~2.7).うつ病の患者の半数が複数の医学的に説明されない身体症状を訴え,直接問診では,11%の患者がうつ病の精神的症状を否定していた.どちらの患者割合にも,施設間の有意なばらつきは認められなかった.抑うつ症状の全体の有病率は施設間で著しく異なっていたが,精神的および身体的な症状の頻度は施設間で同程度であった.

結 論

うつ病の身体症状は多くの国々で共通したものであるが,その頻度は身体化の定義の仕方によって異なる.また,うつ病患者が身体症状の訴えのみで来院する頻度にはかなりのばらつきが認められる.したがって,このばらつきは,一つには,患者間の文化的な相違だけでなく,医師および保健医療制度の特性を反映しているのかもしれない.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 341 : 1329 - 35. )