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November 4, 1999 Vol. 341 No. 19

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死体腎移植における HLA 適合化の経済学的意味
The Economic Implications of HLA Matching in Cadaveric Renal Transplantation

M.A. SCHNITZLER AND OTHERS

背景

死体から摘出された腎臓を組織適合基準に基づいて提供することの潜在的な経済学的影響については,議論がある.そこで,われわれは,HLA(ヒト白血球抗原)不適合数がさまざまに異なる死体腎移植の経済学的費用を分析し,初回の死体腎移植におけるドナーとレシピエント間の HLA 不適合が最小限に抑えられるように設計された地域システムを,その全国システムと比較したときの潜在的な経済学的有益性について検討した.

方 法

本研究で用いたデータは,すべて,米国腎臓データシステム(the U.S. Renal Data System)から入手した.1991 ~ 97 年までにメディケア(老齢者医療保障制度)から初回死体腎移植のレシピエントの医療費として支払われたすべての支払いデータを,ドナーとレシピエント間の HLA-A,B,および DR の不適合数と移植までの死体腎の低温阻血時間によって分析した.

結 果

腎移植レシピエントに対してメディケアから移植後 3 年間にわたって支払われた平均の支払額は,HLA 型が完全に一致した腎臓(HLA-A,B,DR に不適合なし)の移植を受けた患者では $ 60,436 であったが,ドナーとレシピエント間で六つの HLA 型に不適合があった腎臓の移植を受けた患者では $ 80,807 と,不適合患者で支払額が増加し,その差は 34%であった(p < 0.001).また,低温阻血時間が 12 時間未満の腎移植では,メディケアからの移植後 3 年目までの平均支払額は$ 64,119 であったが,阻血時間が 36 時間を超える腎移植では$ 74,997 であった(p < 0.001).シミュレーションでは,低温阻血時間の延長によって発生する潜在的費用を考慮すると,地理的地域内で HLA 不適合を最小限に抑える方法によるレシピエントへの死体腎の供給において(すなわち,約 50 の臓器斡旋組織のうちの 1 組織内で供給する方法であるが,これらの組織が網羅している地域の範囲は大きく異なっている),医療費の節減がもっとも大きく(患者 1 人につき 3 年間で $ 4,290),移植片の生着率ももっとも大きく改善されていた(2.3%).

結 論

死体から摘出した腎臓の移植は適合度が高いほど,移植後の経済学的側面が優れるという可能性が考えられる.今回のわれわれのシミュレーションでは,死体腎の低温阻血時間を考慮すると,医療費の節減額の見積は,地域レベルで HLA 型に基づいて腎臓を分配するという方法でもっとも大きくなった.全国規模での分配プログラムでは,HLA 適合性を最適化することによって得られる利益よりも低温阻血時間延長によってかさむ医療費の方が大きいために,地域レベル以上の節減効果は得られないと推定された.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 341 : 1440 - 6. )