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December 9, 1999 Vol. 341 No. 24

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自閉症および広汎性発達障害の治療における合成ヒトセクレチン単回投与の有用性の欠如
Lack of Benefit of a Single Dose of Synthetic Human Secretin in the Treatment of Autism and Pervasive Developmental Disorder

A.D. SANDLER AND OTHERS

背景

セクレチンは,膵液分泌を促進するペプチドホルモンである.セクレチンの単回投与後に,その病状が顕著に改善したという 1 人の自閉症の小児についての報告があったのは最近のことであるが,おそらく,その報告以降,何千人もの自閉的障害のある小児にセクレチンの注射が行われてきたことであろう.

方 法

自閉症あるいは広汎性発達障害の 60 例の小児(年齢,3~14 歳)を対象として,合成ヒトセクレチン単回静脈内投与のプラセボを対照とした二重盲検比較試験を実施した.これらの小児を,合成ヒトセクレチン(体重 1 kg 当り 0.4 mg),またはプラセボとしての食塩水を静脈内に注入する治療に無作為に割り付けた.自閉症行動チェックリスト(Autism Behavior Checklist)などの,自閉症の一次的および二次的な特性に関する標準化行動評価尺度を用いて,試験開始時および治療後 4 週目までの各経過時点における障害の程度を評価した.

結 果

60 例のうち,4 例は評価を行うことができなかった(2 例は本試験以外でセクレチンの投与を受け,2 例は追跡調査に来なかった).したがって,56 例(各群 28 例)が試験を完了した.セクレチン治療は,プラセボと比較して,転帰の評価尺度のいずれにおいても,有意な改善とは関連しなかった.試験開始時の自閉症行動チェックリストの平均総スコアは,セクレチン群の小児では 59.0(とりうるスコアの範囲,0~158,値が大きいほど障害の程度が重症になる),プラセボ群の小児では 63.2 であった.このスコアの治療後 4 週間における平均低下量は,セクレチン群では 8.9,プラセボ群では 17.8 であった(平均差,-8.9;95%信頼区間,-19.4~1.6;p=0.11).治療を制限する有害作用が発現した小児はいなかった.この試験結果を本試験の小児の両親に伝えたが,両親の 69%は,わが子の治療の一つとしてセクレチンに依然関心があると答えた.

結 論

自閉症または広汎性発達障害に対して,合成ヒトセクレチンの単回投与は有効な治療ではない.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 341 : 1801 - 6. )