カナダにおける肺炎球菌のフルオロキノロンに対する感受性の低下
Decreased Susceptibility of Streptococcus pneumoniae to Fluoroquinolones in Canada
D.K. CHEN AND OTHERS
フルオロキノロンは,現在,Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌)による呼吸器感染症の治療に,とくにその臨床分離株が βラクタム系抗菌薬に耐性を獲得している場合の治療に推奨されている.フルオロキノロンに対して感受性が低下している肺炎球菌が同定されているが,明確に定義された人口集団においては,このような肺炎球菌の有病率は調査されていない.
カナダで 1988 年および 1993~98 年に実施された調査から得られた S. Pneumoniae の臨床分離株 7,551 株に対して感受性検査を行った.そして,フルオロウラシルに低感受性の肺炎球菌(シプロフロキサシンの最小発育阻止濃度(MIC)が 4 μg/mL 以上と定義した)については,その特徴をさらに詳しく検討した.また,カナダの小売り薬局において調剤された抗生剤の処方量についての調査も行った.
1988~97 年までのフルオロキノロンの年間の処方量は,100 人当り 0.8 から 5.5 へと増加していた.フルオロキノロン低感受性肺炎球菌の有病率は,1993 年には 0%であったのが,1997 年および 98 年には 1.7%にまで上昇していた(p = 0.01).成人の有病率は,1993 年と 94 年を併せた場合には 1.5%であったのが,1997 年と 98 年を併せると 2.9%へと上昇した.この低感受性菌の有病率は,高齢患者(65 歳以上の患者で 2.6% 対 15~64 歳の患者で 1.0%,p<0.001),およびオンタリオ州の患者(1.5% 対 オンタリオ州を除いたカナダの他州の患者では 0.4%;p<0.001)から分離された臨床分離株で高かった.また,フルオロキノロンの使用も,高齢者およびオンタリオ州でもっとも多くなっていた.フルオロキノロン低感受性肺炎球菌は,八つの州の 40 施設の検査室から 75 株の臨床分離株(17 の血清型)が提出されていた.フルオロキノロンに対する感受性の低下には,ペニシリンに対する耐性との関連が認められた.
カナダでは,フルオロキノロン低感受性肺炎球菌の有病率が上昇しているが,これは,おそらくフルオロキノロンの使用が増加したことによる淘汰圧の結果として上昇したものであろう.