癌化学療法中に顆粒球減少をきたした患者の発熱に対する経験的抗菌薬の経口投与と静脈内投与との比較
Oral Versus Intravenous Empirical Antimicrobial Therapy for Fever in Patients with Granulocytopenia Receiving Cancer Chemotherapy
W.V. KERN AND OTHERS
顆粒球減少症を発症した癌患者における発熱の経験的管理では,抗菌薬の静脈内投与が標準的な選択肢となっている.経口投与による経験的治療の効果が静脈内投与による治療と同程度であれば,経口薬による治療は QOL の向上や費用削減といった利点を提供するものと考えられる.
非盲検前向き多施設共同試験において,10 日以内に回復すると予測された顆粒球減少症と発熱を有する癌患者を,シプロフロキサシン(750 mg を 1 日 2 回投与)とアモキシシリン・クラブラン酸(625 mg を 1 日 3 回投与)の経口投与,またはセフトリアキソンとアミカシンの常用量による静脈内投与のいずれかの経験的治療に無作為に割り付けた.全例を解熱するまで入院させた.本試験の主目的は,これらのレジメンの同等性を検討することであった.レジメン間の同等性は,治療の成功率の絶対差が 10%以下と定義した.
2 回目の中間解析で同等性が証明されたため,本試験は,353 例が組み入れられた後に終了させた.プロトコールに従って治療され,評価が可能であった 312 例を対象とした解析では,治療が成功したのは,経口療法群の患者の 86%(95%信頼区間,80~91%),静注療法群の患者の 84%(95%信頼区間,78~90%;p=0.02)であった.intention-to-treat に基づく解析でも,治療成功率は同程度であり(それぞれ 80%と 77%;p=0.03),発熱の持続期間,レジメンの変更までの時間,レジメンの変更理由,治療期間,生存に関する結果も同程度であった.発現した有害事象については,種類は 2 群間でわずかに異なったが,頻度は同程度であった.
発熱および顆粒球減少症が併発した低リスク癌患者に対しては,シプロフロキサシンとアモキシシリン・クラブラン酸の経口療法が,静注療法と同程度に有効である.