高比重リポ蛋白コレステロール低値の男性における冠動脈心疾患の二次予防としてのゲムフィブロジル
Gemfibrozil for the Secondary Prevention of Coronary Heart Disease in Men with Low Levels of High-Density Lipoprotein Cholesterol
H.B. RUBINS AND OTHERS
冠動脈心疾患の患者では,上昇している血清低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール値を低下させることが有益であるということは一般に認められているが,高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール値の低下が脂質の主な異常である患者の治療法決定の手引きとなるようなデータはほとんど得られていない.
ゲムフィブロジル(1,200 mg/日)をプラセボと比較する二重盲検試験を,HDL コレステロールの値が 40 mg/dL(1.0 mmol/L)以下,かつ LDL コレステロールの値が 140 mg/dL(3.6 mmol/L)以下の冠動脈心疾患の男性 2,531 例を対象として実施した.試験の主要転帰は,非致死的心筋梗塞または冠動脈が原因の死亡であった.
追跡調査期間の中央値は 5.1 年間であった.試験 1 年目の時点で,ゲムフィブロジル群では,プラセボ群よりも,HDL コレステロールの平均値が 6%高く,トリグリセリドの平均値が 31%低く,総コレステロールの平均値が 4%低くなっていた.LDLコレステロールの値には,2 群間に有意差は認められなかった.主要イベントは,プラセボ群に割り付けられた患者 1,267 例中の 275 例(21.7%)と,ゲムフィブロジル群に割り付けられた患者 1,264 例中の 219 例(17.3%)に発現した.このイベントのリスク全体の低下は 4.4 パーセントポイントで,相対リスクの低下は 22%(95%信頼区間,7~35%;p = 0.006)であった.冠動脈心疾患による死亡,非致死的心筋梗塞,脳卒中の複合転帰には,24%の低下が認められた(p < 0.001).冠動脈の血行再開率,不安定狭心症による入院率,全死因死亡率,癌の発生率については,有意差は認められなかった.
脂質の主な異常が HDL コレステロール値の低下であった冠動脈疾患の患者において,ゲムフィブロジル療法は,重大な心血管系イベントのリスクを有意に低下させる結果となった.この試験結果は,LDL コレステロールを減少させることなくHDL コレステロールを増加させトリグリセリドを減少させることが,冠動脈イベントの発生率を低下させるということを示している.