アテローム硬化性腎動脈狭窄における高血圧症に対するバルーン血管形成術の効果
The Effect of Balloon Angioplasty on Hypertension in Atherosclerotic Renal-Artery Stenosis
B.C. VAN JAARSVELD AND OTHERS
高血圧症と腎動脈狭窄を合併している患者には,しばしば経皮的腎動脈形成術の治療が行われる.しかしながら,この治療手技の血圧に対する長期効果については十分には理解されていない.
アテローム硬化性腎動脈狭窄(血管内径の 50%以上の減少と定義した)かつ血清クレアチニン値が 2.3 mg/dL(200 μmol/L)以下の高血圧症患者 106 例を,経皮的腎動脈形成術または薬物療法の治療に無作為に割り付けた.さらに,本試験への患者の組み入れには,2 剤併用の降圧剤治療を行っても拡張期血圧が 95 mmHg 以上であること,あるいはアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬の治療中に血清クレアチニン値が少なくとも 0.2 mg/dL(20 μmol/L)上昇したことが確認されていなければならないこととした.血圧,降圧剤の投与量,および腎機能は 3 ヵ月目および 12 ヵ月目の時点で評価し,腎動脈の開通性は 12 ヵ月目の時点で評価した.
試験開始時の平均(±SD)の収縮期および拡張期血圧は,血管形成術群ではそれぞれ 179±25 および 104±10 mmHg,薬物療法群ではそれぞれ 180±23 および 103±8 mmHg であった.3 ヵ月目の時点においても,この 2 群の血圧は同程度であった(血管形成術群の 56 例の患者ではそれぞれ 169±28 および 99±12 mmHg,薬物療法群の 50 例の患者ではそれぞれ 176±31 および 101±14 mmHg;収縮期血圧の 2 群間の比較では p = 0.25,拡張期血圧の 2 群間の比較では p = 0.36);この 3 ヵ月目の時点における降圧剤の投与量は,成人の 1 日当りの平均維持用量を 1 設定 1 日用量とすると,血管形成術群ではその 2.1±1.3 倍,薬物療法群では 3.2±1.5 倍であった(p<0.001).薬物療法群の 22 例の患者には,3 剤以上の併用治療にもかかわらず高血圧が持続していたために,あるいは腎機能が悪化したために,3 ヵ月目以降にバルーン血管形成術が行われた.intention-to-treat(ITT)解析では,12 ヵ月目の時点では,収縮期および拡張期血圧,薬剤の 1 日投与量,あるいは腎機能には,血管形成術群と薬物療法群のあいだに有意な差は認められなかった.
高血圧症と腎動脈狭窄を合併している患者の治療においては,血管形成術には,降圧剤療法よりも優れた点はほとんど認められない.