The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

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日本語アブストラクト

June 8, 2000 Vol. 342 No. 23

無症候性内頸動脈狭窄症の患者における脳卒中の原因とリスク
The Causes and Risk of Stroke in Patients with Asymptomatic Internal-Carotid Artery Stenosis

D. INZITARI AND OTHERS

背景

 無症候性頸動脈狭窄症の患者における脳卒中の原因は詳しくは検討されていない.しかしながら,この原因についての情報は,このような患者が頸動脈内膜切除術の適応になるかどうかの判断に影響を及ぼすかもしれない.

方 法

 一側性の症候性頸動脈狭窄症および対側性の無症候性狭窄症の患者を対象とした研究を,1988 ~ 97 年に実施した.無症候性動脈の支配領域において発症した脳卒中の原因,重症度,リスク,および予測因子について検討し,定量化した.

結 果

 合計 1,820 例の患者の研究組み入れ後,5 年目の時点における脳卒中のリスクは,狭窄の重症度に伴い上昇していた.脳卒中の初発のリスクは,狭窄が血管内径の 60%未満であった 1,604 例の患者では 8.0%(1 年当り 1.6%)であったのに対して,狭窄が 60 ~ 99%であった 216 例の患者では 16.2%(1 年当り 3.2%)であった.狭窄が 60 ~ 99%の患者群については,大きな動脈の支配領域において脳卒中が発症する 5 年リスクは 9.9%,ラクナ脳卒中の 5 年リスクは 6.0%,心原性の塞栓性脳卒中の 5 年リスクは 2.1%であった.患者によっては,二つ以上の原因による脳卒中が 2 回以上発症していた.無症候性閉塞動脈(このような閉塞動脈は 86 例の患者で同定された)については,この支配領域において脳卒中が発症する 1 年当りのリスクは 1.9%であった.脳卒中の原因が異なると,その危険因子も異なっていた.すなわち,大きな動脈の脳卒中の危険因子は,無症候性のサイレント脳梗塞,糖尿病の病歴,および程度がより高度な狭窄であった; 心原性の塞栓性脳卒中の危険因子は,心筋梗塞または狭心症の病歴および高血圧症であった; ラクナ脳卒中の危険因子は,75 歳以上の年齢,高血圧症,糖尿病,および程度がより高度な狭窄であった.

結 論

 無症候性頸動脈狭窄症の患者における脳卒中のリスクは比較的低いものである.そして,狭窄が 60 ~ 99%の無症候性の患者に発症した脳卒中は,その 45%がラクナまたは心原性塞栓によるものである.これらの知見には,無症候性患者に対する動脈内膜切除術適用に関連した示唆が含まれている.すなわち,脳卒中のリスクを原因別に分析しない場合には,動脈内膜切除術によって得られる絶対有益性が過大評価される可能性がある.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2000; 342 : 1693 - 700. )