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June 8, 2000 Vol. 342 No. 23

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腹水貯留患者における穿刺術と経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術との比較
A Comparison of Paracentesis and Transjugular Intrahepatic Portosystemic Shunting in Patients with Ascites

M. RÖSSLE AND OTHERS

背景

肝硬変および腹水の患者では,経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術によって,腹水が減少し,腎機能が改善されることがある.しかしながら,大量穿刺と比較したときの,この手技の有益性については確認されていない.

方 法

肝硬変および難治性または再発性の腹水貯留の患者 60 例(Child–Pugh 分類のクラス B が 42 例,クラス C が 18 例)を,経頸静脈的短絡術(29 例)または大量穿刺(31 例)の治療に無作為に割り付けた.追跡調査の平均(±SD)期間は,短絡術に割り付けられた患者では 45±16 ヵ月間,穿刺術に割り付けられた患者では 44±18 ヵ月間であった.主要転帰は肝移植を受けない状態での生存であった.

結 果

短絡術群の患者では,試験期間中に 15 例が死亡し,1 例が肝移植を受けたのに対して,穿刺術群では,23 例が死亡し,2 例が肝移植を受けた.肝移植を受けない状態での生存の確率は,短絡術群では 1 年目が 69%,2 年目が 58%であった.これに対して,穿刺術群では,それぞれ 52%および 32%であった(log-rank 検定による全体の比較で p = 0.11).多変量解析では,経頸静脈的短絡術の治療には,移植を必要としない生存との独立した関連が認められた(p = 0.02).3 ヵ月の時点で,腹水は短絡術群の患者の 61%,穿刺術群の患者の 18%で消失していた(p = 0.006).肝性脳症の発症率は 2 群とも同程度であった.穿刺術に割り付けられ,この手技が無効であった患者のうち,10 例が無作為化後平均で 5.5±4 ヵ月の時点で経頸静脈的短絡術を受け,4 例がこの救済治療に反応した.

結 論

経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術は,大量穿刺と比較して,難治性または再発性の腹水貯留の患者が肝移植を受けない状態で生存する確率を向上させる可能性がある.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2000; 342 : 1701 - 7. )