February 17, 2000 Vol. 342 No. 7
冠動脈疾患の患者における冠動脈内皮機能に対する運動の効果
Effect of Exercise on Coronary Endothelial Function in Patients with Coronary Artery Disease
R. HAMBRECHT AND OTHERS
冠動脈疾患の患者における運動訓練の心臓保護効果に関する試験の結果は,互いに矛盾するような結果が得られている.しかし,運動訓練は,アテローム性冠動脈硬化症が進行している患者においてさえも,心筋灌流の改善につながっている.そこで,われわれは,冠動脈疾患の患者における内皮機能に対する運動訓練の効果について,プロスペクティブな試験を実施した.
アセチルコリンで誘発される異常血管収縮によって示される冠動脈の内皮機能障害の患者 19 例を,運動訓練群(10 例)あるいは対照群(9 例)に無作為に割り付けた.交絡を少なくさせるために,運動訓練の影響を受ける可能性がある冠動脈の危険因子(糖尿病,高血圧症,高コレステロール血症,および喫煙など)を有する患者は除外した.最初と 4 週後の誘発試験では,アセチルコリンの用量を漸増しながら冠動脈内に注入し(0.072,0.72,および 7.2 μg/分),それに対する血管径の変化を測定した.平均最高血流速度はドプラー速度計で測定し,心外膜の冠動脈の血管径は定量的冠動脈血管造影法にて求めた.
最初の誘発試験では,2 群のアセチルコリンに対する血管収縮反応は同程度であった.4 週間の運動訓練後には,7.2 μg/分で注入したときのアセチルコリンに対する冠動脈の血管収縮が 54%減少した(内径の平均[±SD]縮小は,最初の誘発試験では 0.41±0.05 mm であったのが 4 週目には 0.19±0.07 mm と,縮小幅が減少した; 対照群の変化との比較で p < 0.05).アセチルコリンの 0.072,0.72,および 7.2 μg/分を注入したときの運動訓練群の平均最高血流速度の上昇は,最初の誘発試験では,それぞれ 12±7%,36±11%,および 78±16%であった.このアセチルコリンに対する平均最高血流速度の上昇は,4 週間の運動後には,27±7%,73±19%,および 142±28%になった(対照群との比較で p < 0.01).冠動脈血流予備力(安静時の血流速度に対するアデノシン注入時の平均最高血流速度の比)は,4 週間の運動後に 29%増加した(最初の誘発試験では 2.8±0.2 であったのが 4 週後には 3.6±0.2 に増加した; 対照群との比較で p < 0.01).
運動訓練は,冠動脈疾患の患者において,心外膜の冠動脈血管と抵抗血管の両血管の内皮に依存した血管拡張を改善させる.