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March 2, 2000 Vol. 342 No. 9

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ウィップル病桿菌の培養
Cultivation of the Bacillus of Whipple's Disease

D. RAOULT AND OTHERS

背景

ウィップル病は全身性の細菌感染症であるが,今日までのところ,この細菌の臨床分離株の継代培養には成功しておらず,この細菌の研究に利用できるような菌株は得られていない.

方 法

ウィップル病による心内膜炎患者 1 例の僧帽弁から検体を採取し,シェルバイアル法を用いて,この検体をヒトの線維芽細胞系(HEL)に接種することによって細菌を分離,増殖させた.この患者と他のウィップル病の患者,および対照被験者から採取した血清検体を検査し,この細菌の抗体が存在するかどうかを調べた.

結 果

ウィップル病の病原菌を HEL 細胞で増殖させることに成功し,この分離株の継代培養を樹立することができた.間接免疫螢光測定法では,この患者の血清が,この細菌に特異的に反応することが示された.IgM 抗体価が 1:50 以上であったのは,ウィップル病の患者から採取した血清検体では 9 検体のうち 7 検体であったのに対して,対照被験者から採取した 40 検体では 3 検体だけであった(p < 0.001).この微生物をマウスに接種して,この細菌に対するポリクローナル抗体を作成し,免疫組織化学的検査で,この患者から切除した心臓組織内に感染していた細菌を検出するのに用いた.ここで培養した細菌の 16S リボソーム RNA の遺伝子は,これまでにウィップル病の患者から採取された組織検体で同定されていた Tropheryma whippelii の塩基配列と同一であった.今回,われわれが増殖させた菌株は,フランス国立コレクション(French National Collection)において入手可能である.

結 論

今回,われわれは,ウィップル病の病原菌を培養し,この樹立株を分離した患者の体内に特異的抗体を検出するとともに,組織内の微生物の免疫学的検出に利用できるような特異的抗体を,マウスを用いて作成した.今後は,ウィップル病の血清学的検査の開発が可能になるであろう.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2000; 342 : 620 - 5. )