November 30, 2000 Vol. 343 No. 22
臨床試験の研究者における利害の対立に関する方針
Conflict-of-Interest Policies for Investigators in Clinical Trials
B. LO, L.E. WOLF, AND A. BERKELEY
臨床試験を実施している研究者の側における金銭的な利害対立が,研究被験者の福祉を危うくするかもしれないという大きな懸念がある.
このような利害対立を律する方針について,米国国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)から最高額の研究費を受け取っている米国の大学 10 校の医学部を対象にして,その分析を行った.検討した施設は,ベイラー医科大学,コロンビア大学付属内科医 & 外科医カレッジ,ハーバード大学医学部大学院,ジョンズ・ホプキンス大学医学部,ペンシルベニア大学医学部,カリフォルニア大学ロサンジェルス校医学部,カリフォルニア大学医学部サンフランシスコ校,ワシントン大学医学部,ワシントン大学医学部セントルイス校,およびエール大学医学部であった.
10 校の大学のすべてにおいて,教員には,金銭的な利益を大学当局に公開することが要求されていた.しかし,すべての研究員からの開示が要求されていたのは 4 校だけであった.連邦規則で開示の下限が規定されているものの,5 校では,金銭的な利益のすべてを開示することが要求されていた.6 校では,利害対立に関する委員会や大学当局への開示だけでなく,治験審査委員会(IRB)への開示も求められていた.4 校では,臨床試験を実施する研究者に対する要求が,連邦規則よりも厳しいものであった.すなわち,そのうちの 1 大学では,研究者に対して,該当する研究のスポンサーになっている企業に関連した株式やストックオプション(株式買い取り選択権)を保有することや,その企業の顧問や決定権のある地位につくことを禁じていた.もう一つの大学では,研究者に対して,該当する研究のスポンサーとなっている企業や試験中の医薬品や医療器機を販売している企業の株式やストックオプションの売買を禁止していた.残りの 2 校では,教員が,連邦規則によって試験中の医薬品や医療器機を所有している企業における「有意な」金銭的利益として示されているような利益を受ける場合には,通常は,その臨床研究に参加することを許可されていなかった.しかしながら,例外は認められていた.
米国の主要な大学の医学部に設けられている利害の対立を律する方針は,大きく異なっている.われわれは,大学に所属する研究者と研究員が,その臨床試験の結果によって影響を受けると当然考えられるような企業の株式やストックオプションを保有したり,決定権のある地位についたりすることを禁じることを提案する.今回検討した 10 校の医学部のうちでは,この基準に近い方針が設定されていたのは 1 校のみであった.