April 12, 2001 Vol. 344 No. 15
多枝疾患の治療における冠動脈バイパス術とステント留置の比較
Comparison of Coronary-Artery Bypass Surgery and Stenting for the Treatment of Multivessel Disease
P.W. SERRUYS AND OTHERS
近年になって,冠動脈へのステント留置が,血管形成術を受けた患者の短期および長期の転帰を改善させるということが認められ,多枝疾患の患者に対するバイパス術および経皮的介入の相対的な有益性を再評価する必要性が生じてきた.
合計で 1,205 例の患者をステント留置またはバイパス術に無作為に割付けた.なお,この割付けは,心臓外科医と介入的治療を行っている心臓専門医の意見が,ステント留置とバイパス術のどちらの治療によっても同程度の血行再建が得られるだろうと,一致した場合に行った.主要臨床エンドポイントは,治療後 1 年目までに心臓および脳血管の重大な有害事象が発生しないことであった.さらに,使われた病院の医療資源の費用についても測定した.
治療後 1 年目の時点における死亡,脳卒中,心筋梗塞の発生率には,2 群間に有意な差は認められなかった.脳卒中や心筋梗塞が発生しなかった生存患者のうち,2 回目の血行再建術を受けた割合は,ステント留置群では 16.8%であったのに対して,手術群では 3.5%であった.1 年目の時点における無イベント生存率は,ステントの留置を受けた患者では 73.8%,バイパス術を受けた患者では 87.8%であった(log-rank 検定で p<0.001).初回治療の手技にかかった費用は,ステント留置に割付けられた患者がバイパス術に割付けられた患者よりも$4,212 少なかったが,この費用の差は,ステント留置に割付けられた患者で血行再建術の再施行の必要性が高くなったために追跡調査の期間中に縮まった;したがって,治療後 1 年目の時点においてステント留置を選んだ場合の正味の差は,患者当り$2,973 と推定された.
治療手技後 1 年目の評価では,多枝疾患に対する冠動脈ステント留置はバイパス術よりも安価であり,バイパス術と同程度の死亡,脳卒中,心筋梗塞に対する予防効果が得られる.しかし,ステント留置は,血行再建術の再施行の必要性が上昇することと関連している.