March 15, 2001 Vol. 344 No. 11
高活性抗レトロウイルス療法の時代における HIV 感染患者医療に対する支出額
Expenditures for the Care of HIV-Infected Patients in the Era of Highly Active Antiretroviral Therapy
S.A. BOZZETTE AND OTHERS
高額ではあるが非常に有効な抗ウイルス薬の導入によって,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症患者の医療に使われる資源の総使用量に及ぼす影響についての問題が起きてきている.われわれは,高活性抗レトロウイルス療法(HAART)が市場に導入されてからの HIV 感染患者の医療に対する支出額について調査した.
1996 年の初めに HIV 感染の治療を受けていたすべての米国成人の代表として,無作為に抽出した 2,864 名の患者に面接を行い,引き続いて最長で 36 ヵ月間にわたる追跡調査を行った.患者の自己申告によって得られたおのおのの患者が受けた医療の情報に基づき,医療に対する患者 1 人当りの 1 ヵ月間の平均支出額を推定した.
医療に対する患者 1 人当りの 1 ヵ月間の平均支出額は,調査開始時には $ 1,792 であったのが,1997 年に生存していた患者では $ 1,359 に減少していた.この減少は,薬剤支出額の増加が入院支出額の減少よりも少なかったことによる.高活性抗レトロウイルス療法の使用は,支出額の減少と独立した関連があった.面接日,臨床状態,および死亡で補正したときの年間の推定支出額は,1996 年の $ 20,300 が,1998 年には $ 18,300 に減少した.患者の部分集団の支出額は三つの因子によって変化していた.黒人,女性,および私的医療保険に加入していない患者が含まれる医療サービスを余り受けていなかった患者の部分集団で,薬剤費がもっとも少なく,入院費がもっとも多かった.
HIV 感染症の成人の医療にかかる総費用は,高活性抗レトロウイルス療法が導入されてから減少している.薬剤支出額が増加しているのに対して,これ以外の医療サービスの支出額は減少している.しかし,これらの支出額には,患者の部分集団による大きな差が存在している.