March 15, 2001 Vol. 344 No. 11
虫垂切除術と潰瘍性大腸炎の保護
Appendectomy and Protection against Ulcerative Colitis
R.E. ANDERSSON, G. OLAISON, C. TYSK, AND A. EKBOM
潰瘍性大腸炎の患者が,虫垂切除術の既往をもっているのはまれである.このことは,虫垂切除術に保護作用があること,あるいは虫垂炎と潰瘍性大腸炎が二者択一的な炎症性反応であるということを示唆している.われわれは,この逆の関係の特徴をさらに明確にしようと試みた.
1964~93 年の期間に,50 歳になる前に虫垂切除術を受けた 212,963 例の患者から成るコホートと,これらのコホートにマッチした対照をスウェーデン入院患者登録(the Swedish Inpatient Register)と全国規模の国勢調査から同定して検討を行った.これらコホートの追跡調査は,潰瘍性大腸炎の診断を受けたかどうかについて,1995 年まで行った.
虫垂炎および腸間膜リンパ節炎が原因で虫垂切除術を受けた患者は,潰瘍性大腸炎のリスクが低かった(補正ハザード比は,穿孔性虫垂炎の患者が 0.58 [95%信頼区間,0.38~0.87];非穿孔性虫垂炎の患者が 0.76 [95%信頼区間,0.65~0.90];腸間膜リンパ節炎の患者が 0.57 [95%信頼区間,0.36~0.89] であった).これに対して,非特異的な腹痛のために虫垂切除術を受けた患者の潰瘍性大腸炎のリスクは,対照のリスクと同程度であった(補正ハザード比,1.06;95%信頼区間,0.74~1.52).また,虫垂炎の患者にみられた虫垂切除術と潰瘍性大腸炎のリスクとの逆の関係は,20 歳になる前に虫垂切除術を受けた患者にしか認められなかった(p < 0.001).
炎症性の病態(虫垂炎やリンパ節炎)に対する虫垂切除術は,潰瘍性大腸炎発症のリスクの低下に関連しているが,非特異的な腹痛に対する虫垂切除術には,このような関連は認められない.さらにこの逆の関係の存在は,20 歳以前に虫垂切除術を受けた患者に限定されている.