November 8, 2001 Vol. 345 No. 19
危篤患者における強力インスリン療法
Intensive Insulin Therapy in Critically Ill Patients
G. VAN DEN BERGHE AND OTHERS
危篤患者では,たとえ糖尿病の病歴がなくとも,高血糖症とインスリン対抗性が一般的にみられる.このような患者において,インスリン療法による血糖値の正常化が,予後を改善させるかどうかはわかっていない.
当施設の外科集中治療室に入院して機械的人工呼吸が行われていた成人を対象として,前向きの無作為比較対照試験を実施した.これらの患者を,入院時に,強力インスリン療法(血糖値を 80~110 mg/dL に維持),または従来の治療(血糖値が 215 mg/dL を超えた場合にのみインスリンを注入し,血糖値を 180~200 mg/dL に維持)に,無作為に割付けた.
12 ヵ月目の時点で,試験に組み入れられた合計 1,548 例の患者において,強力インスリン療法は,従来の治療で 8.0%あった集中治療期間中の死亡率を 4.6%に低下させた(p<0.04,逐次解析のための補正あり).この強力インスリン療法の有益性は,集中治療室に 5 日間を超えて滞在していた患者の死亡率に対する効果に起因したものであった(従来の治療では 20.2%であったのに対し,強力インスリン療法では 10.6%;p=0.005).死亡率の低下には,敗血症をきたす感染巣のある多臓器不全による死亡が,もっとも大きく関与していた.さらに強力インスリン療法は,全院内死亡率を 34%,菌血症を 46%,透析または血液濾過を必要とする急性腎不全を 41%,赤血球輸血の回数の中央値を 50%,および危篤病態の多発性神経障害を 44%低下させたので,強力療法を受けている患者では,長期の機械的人工呼吸および集中治療が必要になる可能性は低かった.
外科集中治療室の危篤患者において,血糖値を 110 mg/dL 以下に維持する強力インスリン療法は,病的状態と死亡を減少させる.