December 20, 2001 Vol. 345 No. 25
造血細胞移植における主要組織適合性複合体クラス I の対立遺伝子と抗原
Major-Histocompatibility-Complex Class I Alleles and Antigens in Hematopoietic-Cell Transplantation
E.W. PETERSDORF AND OTHERS
非血縁ドナーから提供された造血幹細胞が生着に成功するかどうかは,ドナーとレシピエント間の HLA-A,B,および C の対立遺伝子の不一致に影響される.血清学的に検出可能な HLA 型の多型性の不一致は抗原不適合と呼ばれているのに対して,DNA の塩基配列決定法によってしか同定できない不一致は対立遺伝子不適合と呼ばれている.移植において,この両方の種類の多型性が重要なのかどうかということはわかっていない.DNA レベルでしか検出できない対立遺伝子不適合は,血清学的に検出可能な不適合よりも免疫原性が低く,そのため,造血細胞移植後の移植片不全のより低いリスクに関連するという仮説を検定した.
慢性骨髄性白血病の治療として,骨髄破壊的前処置後に非血縁ドナーから骨髄の提供を受けた 471 例の患者を対象として,DNA 塩基配列決定法を用いて,HLA-A,B,および C の対立遺伝子を確定した.移植片不全のオッズ比は,1 個のクラス I 対立遺伝子の不適合,1 個のクラス I 抗原の不適合,あるいは 2 個以上のクラス I の不適合を有していたドナーから移植を受けたレシピエントについて,不適合をまったく有していなかったドナーから移植を受けたレシピエントと比較して求めた.
移植片不全のリスクは,1 個の HLA 対立遺伝子の不適合によっては上昇しなかったのに対して,1 個の抗原の不適合によって有意に上昇した.また,このリスクは,レシピエントが不適合であったクラス I の遺伝子座において HLA ホモ接合であった場合,あるいはドナーが 2 個以上のクラス I の不適合を有していた場合にも上昇した.
血清学的に検出できる HLA のクラス I 抗原の不適合は,造血細胞移植後に移植片不全のリスクの上昇をもたらす.1 個の血清学的には検出できないクラス I 対立遺伝子の不適合を有するドナーからの移植は,移植片不全のリスクを増加させることなく実施できるかもしれない.