December 27, 2001 Vol. 345 No. 26
台湾人男性におけるエプスタイン・バーウイルス感染の血清マーカーと上咽頭癌
Serologic Markers of Epstein–Barr Virus Infection and Nasopharyngeal Carcinoma in Taiwanese Men
Y.-C. CHIEN AND OTHERS
エプスタイン・バーウイルス(EBV)が上咽頭癌の発症にかかわっているということは,考えられることではあるが,証明されていない.われわれは,上咽頭癌が発生する前に,EBV に対する抗体が存在しているのかどうかについて確認した.
1984~86 年の期間に,合計で 9,699 例の男性をこの研究に組み入れた.血液検体を用いて,EBV のカプシド抗原に対する IgA 抗体と,EBV-特異デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)に対する中和抗体の検査を行った.131,981 人-年の追跡調査期間に,この研究に組み入れられてから 1 年以上経過後に診断を受け,病理学的に新たに上咽頭癌と確定された 22 例が,台湾がん登録(National Cancer Registry of Taiwan)とのリンクによって確認された.
100,000 人-年当りの上咽頭癌の累積リスクは,どちらの血清マーカーも陽性ではなかった被験者では 11.2,片方のマーカーだけが陽性であった被験者では 45.0,両方のマーカーが陽性であった被験者では 371.0 であった.年齢と上咽頭癌の家族歴の有無で補正したときの上咽頭癌の相対リスクは,どちらのマーカーも陽性ではなかった被験者に対して,両方のマーカーが陽性であった被験者では 32.8(95%信頼区間,7.3~147.2;p<0.001),片方のマーカーだけが陽性であった被験者では 4.0(95%信頼区間,1.6~10.2;p=0.003)であった.血清陽性被験者と血清陰性被験者とのあいだに認められた上咽頭癌の累積発生率の差は,追跡調査期間が長くなるほど大きくなった.
EBV のカプシド抗原に対する IgA 抗体と EBV DNase に対する中和抗体の出現は,上咽頭癌を予測する.