The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

May 16, 2002
Vol. 346 No. 20

  • LRP5 変異による高い骨密度
    High Bone Density Due to an LRP5 Mutation

    <i>LRP5</i> 変異による高い骨密度

    骨粗鬆症は,低密度リポ蛋白受容体関連蛋白 5(LRP5)の遺伝子における機能喪失型変異が原因で生じうる.この研究において著者らは,同遺伝子における機能獲得型変異が高い骨密度と関連している可能性を推論し,高い骨密度,突出した下顎骨,口蓋隆起を有する家系の生化学的・遺伝学的解析を行った.遺伝学的解析では,コドン 171 におけるグリシンからバリンへの置換による LRP5 変異が明らかとなったが,臨床所見とは関連がなかった.in vitro における研究では,LRP5 における欠損が通常この受容体関連蛋白と相互作用する他分子とのシグナル伝達に変化をもたらし,その結果骨密度の増加が生じることが明らかになった.
    この知見は,LRP5 と相互作用する分子が骨粗鬆症治療の標的を提供する可能性を示唆する.

  • 心停止における組織プラスミノーゲン活性化因子
    Tissue Plasminogen Activator in Cardiac Arrest

    冠動脈血栓症と肺塞栓症は,心停止の一般的な原因であり,心停止の症例における血栓溶解療法の使用の理論的根拠となっている.この研究では,心停止と無脈性電気活動を有する患者が二重盲験法で組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)またはプラセボのいずれかが投与されるよう無作為に割付けられた.t-PA 治療は,退院にいたるの生存率と自発的循環の回復率のいずれも増加しなかった.
    試験規模は相対的に小さく,そのため t-PA のわずかな有益効果や選定された患者サブグループへの効果の可能性を排除していない.しかし,この知見に基づくと,心停止の症例に対するこの治療法に関して楽観視する理由はほとんどない.

  • 麻薬系注射薬の不正使用による菌血症
    Bacteremia Due to Tampering with Narcotic Infusions

    麻薬系注射薬の不正使用による菌血症

    ある外科集中治療室の患者におけるセラチア菌(Serratia marcescens)による菌血症の集団発生を徹底的に調査した.計 26 例の感染患者を同定した.症例対照研究において,主要な危険因子は,フェンタニルの持続投与を受けたことがあることと 2 人の特定の呼吸療法士に接触したことであった.患者からの分離株は,投与薬物からの分離株と類似していた.
    今回の大規模な院内集団発生は,1 人の医療従事者の行為の結果のようである;この医療従事者は注射針と麻薬系注射薬を不正に使用していると看護師が報告した.この医療従事者の毛髪を分析したところ,フェンタニル曝露が立証された.治療室からこの従事者を退去させると,集団発生は終焉した.

  • 新生児集中治療の利用可能性と新生児死亡率の関係
    Relation between the Availability of Neonatal Intensive Care and Neonatal Mortality

    新生児集中治療の利用可能性と新生児死亡率の関係

    新生児集中治療の利用可能性には顕著な地域差があるが,新生児科医や新生児集中治療病床の供給数が新生児死亡率と関連しているかどうかは不明である.この後ろ向きコホート研究は,1995 年に生まれた出生時体重 500 g 以上の米国の小児約 390 万人を対象とした.新生児科医の供給数が非常に少ない地域(出生数 10,000 人当り 2.7 人)と比較すると,新生児科医の供給が少ない地域(出生数 10,000 人当り 4.3 人)のほうが,生後 27 日以内の死亡率が低かった.しかし,新生児科医の供給がさらに多くても,リスクがさらに低下することはなかった.
    米国の少数の地域は,新生児科医の供給数が不十分な可能性があるが,新生児死亡率に基づいて判断した場合,他の多くの地域は,必要数を上回っている可能性がある.新生児科医の利用可能性が,他の健康に関する転帰に影響するかどうかは不明である.

  • 短報:4 配偶子のキメリズム
    Brief Report: Tetragametic Chimerism

    短報:4 配偶子のキメリズム

    キメラとは,1 個体の生物の中に遺伝的に異なる 2 つの細胞系が存在することである.この報告は,家族の組織適合性試験で,自分の子供 3 人のうち 2 人の生物学的な母親ではないことが示唆されたために 4 配偶子のキメラを有することが判明した,表現型が正常な女性について述べている.この女性は,末梢血には 1 つの細胞系しかなかったが,他の組織には 2 つ以上の細胞系があった.この女性の T リンパ球は,組み合せはどのようであれ家族の 4 種類の HLA ハプロタイプをもつ家族からの細胞に対し,完全な免疫寛容を示した.
    キメラはまれであるが,十分に診断されていない可能性が高い.組織適合性試験の結果が,家族が血縁関係にないという予期しないことを示唆する場合には,キメラを検出する分子生物学的研究を考慮すべきである.

  • 最近の概念:大線量放射線被曝
    Current Concepts: Major Radiation Exposure

    この論文は,大線量放射線被曝の可能性のある原因を概説し,放射線被曝の物理学的および生物学的原理をまとめ,主要な症候群について述べている.著者らは放射線被曝の医学的管理ならびに危機管理の準備内容に関して説明している.
    大線量の放射線による急性の臨床的影響はよく知られており,簡単な臨床検査で評価できる.

  • 幹細胞論争
    The Stem-Cell Debate

    胚幹細胞を用いた研究に影響を与えうる法律が,連邦議会で審議中である.“Legal Issues in Medicine”の論文で Annas は,下院を通過し上院で審議中の法案と,この問題に対する現政府の見解の概要を説明している.Annas の意見では,真の進歩のためには,生殖目的のクローニングの問題は,治療目的のク ローニングの問題と切り離して考えるべきであるとしている.幹細胞の科学的・医学的使用を取り巻く議論については,Weissman と Evers による“Sounding Board”の 2 つの論文でさらに検討されている.Weissman は米国における状況について議論し,Evers は欧州の見解を示している.