1 型ヒト免疫不全ウイルス感染乳児におけるウイルス量と疾患の進行
VIRAL LOAD AND DISEASE PROGRESSION IN INFANTS INFECTED WITH HUMAN IMMUNODEFICIENCY VIRUS TYPE 1
W.T. SHEARER AND OTHERS
出生前後に感染した乳児における 1 型ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)RNA に関するデータはごく限られている.HIV-1 感染の動態とその疾患の進行との関係の理解が,感染乳児における有効な抗ウイルス治療時期の特定に役立つ可能性がある.
われわれは,HIV 感染乳児 106 人から出生時;生後 1,2,4,6,9,12,15 および 18 ヵ月;その後 6 ヵ月ごとに血漿サンプルを採取した.HIV-1 RNA は,逆転写ポリメラーゼ連鎖反応によって測定した.乳児は 1990 年から 1993 年のあいだに生まれたが,乳児の母親で妊娠中にジドブジン治療を受けていたのはわずか 21%であった.
HIV-1 RNA の血漿濃度は生後急速に増加して,生後 1 2 ヵ月でピークに達し(1 ヵ月および 2 ヵ月での中央値はそれぞれ,318,000 および 256,000 コピー/mL),その後徐々に減少して 24 ヵ月での中央値は 34,000 コピー/mL であった.生後 48 時間以内に初めて HIV-1 培養陽性となった新生児は,生後 7 日以上経てはじめて培養陽性になった新生児より,生後 2 ヵ月間のみであったが,HIV-1 RNA 濃度が有意に高かった.疾患が急速に進行した乳児は,急速な進行を認めなかった乳児より生後 2 ヵ月間のピーク時 HIV-1 RNA 濃度が高く(中央値,724,000 対 219,000 コピー/mL;p = 0.006),しかも生後 1 年間の幾何平均値も高かった(中央値,330,000 対 158,000 コピー/mL;p = 0.001).
出産前後に感染した乳児では,HIV-1 RNA 濃度が高く,生後 2 年のあいだにごくゆっくりと減少する.生後 1 ヵ月でウイルス量が非常に高い乳児は,疾患が急速に進行するリスクが増大しており,このことは,これらの乳児には抗レトロウイルス剤による早期治療が必要である可能性を示唆する.