September 4, 1997 Vol. 337 No. 10
急性肺動脈塞栓症に対する未分画ヘパリンと低分子量ヘパリンとの比較
A COMPARISON OF LOW-MOLECULAR-WEIGHT HEPARIN WITH UNFRACTIONATED HEPARIN FOR ACUTE PULMONARY EMBOLISM
G. SIMONNEAU AND OTHERS
低分子量ヘパリンは,深部静脈血栓症の治療に対して標準的未分画ヘパリンと少なくとも同程度に有効かつ安全であるように思われるが,急性症候性肺動脈塞栓症の治療に対する低分子量ヘパリンの使用については,利用できるデータはごく限られている.
われわれは,血栓溶解療法または塞栓切除術を必要としない症候性肺動脈塞栓症患者 612 人を無作為割付けして,低分子量ヘパリン (チンザパリン) を一定用量で 1 日 1 回皮下投与,または補正用量の未分画ヘパリンの静脈内投与のいずれかを行った.経口抗凝固療法を 1 日目~3 日目のあいだに開始し,少なくとも 3 ヵ月間投与した.8 日目および 90 日目に,再発性血栓塞栓症,大出血および死亡の複合エンドポイントに関して治療を比較した.
治療の最初の 8 日間では,少なくとも一つのエンドポイントに達したのは,未分画ヘパリン群の患者では 308 人中 9 人(2.9%)であったのに対し,低分子量ヘパリン群の患者では 304 人中 9 人であった(3.0%;絶対差 0.1%ポイント;95%信頼区間,-2.7~2.6).90 日目では,少なくとも一つのエンドポイントに達したのは,未分画ヘパリン群の患者では 22 人(7.1%),そして低分子量ヘパリン群の患者では 18 人(5.9%)であった(p = 0.54;絶対差,1.2%ポイント;95%信頼区間,-2.7~5.1).大出血のリスクは,試験期間を通じて二つの治療群で同程度であった.
本試験の条件下では,急性肺動脈塞栓症患者に対する低分子量ヘパリンであるチンザパリンによる初回皮下療法は,未分画ヘパリンの静脈内投与と同程度に有効かつ安全であるように思われた.